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渇望

救護車の中にインハイが終わりを告げるアナウンスが響く。
ボクはカラカラ。
喉も頭も爪先も、とにかくカラカラ。
指先の一つも充分に動かせず、ドロついた血だけが申し訳程度に体内を巡っていた。
アナウンスはインハイを終わらせた者の名を歓声にかき消されまいと繰り返す。

オノダサカミチ と。

鳴り止まない歓声は、耳鳴りの様。
実際、耳鳴りかもしれない。
ぼやけた視界に見えるはずもない風景が浮かんでくるくらいだから、色々バグってる。

表彰台で優勝杯を高らかと掲げて笑うオノダサカミチ。

それはボクのや。
ずっと欲しくて、欲しくて。
欲しくて堪らんかった、ボクのモノや。
誰にも触らせたない。

カラカラのボクの頭は、混乱した。

欲しい。
ほしい。
ホシイ。

そう欲するけど、カラカラのボクの頭ではボクが欲しいものが何だったのかも分からなくなった。
このぼやけた視界に映る、見えるはずもない景色の全てを手にいれたら、ボクは満たされるのやろか。



END
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