坂道
サカミチと共に海外に出て、初めて気がついた。
サカミチという名前は外国人には発音し難いらしい。
チームのメンバーやスタッフは、いつからか“サカミチ”と発音するのを諦め、縮めて“サチ”という愛称を付けていた。
サカミチはその名で呼ばれれば返事はするし、その名で呼ぶなとも言わないが、『女の子みたい』とボクにこっそりとボヤく。
そんなある日、ボクはスタッフとの雑談の中で、こっそりと聞かれた。
「サチは私達がサチって呼んでるのを良くは思ってないのかな?」
そのスタッフが外国人からしたら感情が分かりにくいであろう日本人であるサカミチの微妙なアクションを察する技を習得したのか、はたまた嫌がってるのがバレるくらいにサカミチの顔に出ていたのか。
いずれにしろ可笑しくて、ボクはプッと吹き出す。
「もしかして、“サチ”って日本語で変な意味?」
不安そうに尋ねてくるスタッフに、ボクは教えてやった。
「日本語で“サチ”は“幸せ”って意味や」
「え!じゃあ彼にピッタリの名前じゃない?」
ボクも、そう思う。
サカミチが“サチ”呼ばれた頃、ボクは目から鱗が出たというか…サカミチの中に“幸せ”があるから、あんなに黄色いんだと納得して鳥肌が立ったくらいだ。
しかも、サカミチから“サチ”を引いたら残るのは“カミ”。
サカミチの両親がそこまで考えたかは分からないが、偶然にしても出来すぎたアナグラム。
「これからも“サチ”って呼んでいいのかな?」
サカミチ本人が内心嫌がってるのを知っていたけど、ボクは目を細めてこう答える。
「ええんやない?」
ボクはそう呼びはしないけど、“サチ”という呼び名はボクも気に入ってる。
それに、サカミチと呼ぶのはボクだけでいい。
「サカミチぃ!」
ボクは今日も特別なその名前を呼ぶ。
これからも、ずっと。
ボクを幸せに導く世界一の名前。
END
サカミチという名前は外国人には発音し難いらしい。
チームのメンバーやスタッフは、いつからか“サカミチ”と発音するのを諦め、縮めて“サチ”という愛称を付けていた。
サカミチはその名で呼ばれれば返事はするし、その名で呼ぶなとも言わないが、『女の子みたい』とボクにこっそりとボヤく。
そんなある日、ボクはスタッフとの雑談の中で、こっそりと聞かれた。
「サチは私達がサチって呼んでるのを良くは思ってないのかな?」
そのスタッフが外国人からしたら感情が分かりにくいであろう日本人であるサカミチの微妙なアクションを察する技を習得したのか、はたまた嫌がってるのがバレるくらいにサカミチの顔に出ていたのか。
いずれにしろ可笑しくて、ボクはプッと吹き出す。
「もしかして、“サチ”って日本語で変な意味?」
不安そうに尋ねてくるスタッフに、ボクは教えてやった。
「日本語で“サチ”は“幸せ”って意味や」
「え!じゃあ彼にピッタリの名前じゃない?」
ボクも、そう思う。
サカミチが“サチ”呼ばれた頃、ボクは目から鱗が出たというか…サカミチの中に“幸せ”があるから、あんなに黄色いんだと納得して鳥肌が立ったくらいだ。
しかも、サカミチから“サチ”を引いたら残るのは“カミ”。
サカミチの両親がそこまで考えたかは分からないが、偶然にしても出来すぎたアナグラム。
「これからも“サチ”って呼んでいいのかな?」
サカミチ本人が内心嫌がってるのを知っていたけど、ボクは目を細めてこう答える。
「ええんやない?」
ボクはそう呼びはしないけど、“サチ”という呼び名はボクも気に入ってる。
それに、サカミチと呼ぶのはボクだけでいい。
「サカミチぃ!」
ボクは今日も特別なその名前を呼ぶ。
これからも、ずっと。
ボクを幸せに導く世界一の名前。
END
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