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今日は一日中晴天。
朝の天気予報ではそう言っていたが、天気予報は時々外れる。
朝晴れていた空は真っ暗で時間の感覚を失うほど。
その空から降り注ぐ雨は容赦なく地面に叩きつけられていた。
駐輪場には人気はない。
多分誰もが自転車を使って帰ることを諦めたのだろう。
そんな駐輪場には、凸凹な身長差の二人が各自の愛車の傍らで佇み、真っ暗な空を眺めていた。
「僕、傘持ってるよ」
背の低い方…坂道はそう言うとリュックから折り畳み傘を取り出す。
「だからなんやの」
背の高い方…御堂筋は呆れた声をあげた。
一本しかない折り畳み傘は二人で雨を避けるには小さすぎるし、なによりロードに乗りながら傘をさすことなど出来ない。
御堂筋は坂道の折り畳み傘を広げると、駐輪場の屋根の下から出て、その小ささを見せつける様に雨を受ける。
簡易的な折り畳み傘は小さくて、御堂筋の体には不似合い。
肩を竦めていなくては、肩を濡らす程だった。
「ボクには小さすぎて役に立たん、お子様サイズやね。丁度いい坂道がさして電車で帰りぃ、ボクがキミのロードも押して帰ったる」
御堂筋は皮肉を言いながらも坂道が雨に濡れずに帰れる様に傘を差し出すが、坂道は受け取らない。
「それじゃ、御堂筋くんが濡れちゃうよ?」
「せやから先に電車で帰って風呂沸かしとき」
「えー、一緒に帰れないの?」
「同じとこ帰るんやから、一緒に帰らんでもえぇやろ」
そんな押し問答をしてる間に、屋根の下から出ていた御堂筋の体は雨に打たれていた。
「ボク、すでに濡れてるから電車乗れへん!」
「じゃあ、僕も自転車で一緒に帰る!」
普段は折れなくてもいいところでさえすぐに折れるくせに、一度言い出したら絶対に折れないのを知っていた御堂筋は、これ以上の言い合いは無意味と諦め半分。
「もう広げたんやから使えばえぇのに」
「…じゃあ、使う」
急に素直になった坂道が、御堂筋から傘を受け取ったかと思えば、傘を傾けて背伸びをして見せる。
「傘の使い方、間違うてるし」
御堂筋はそう言いながらも体を屈めると、坂道はクスクスと笑いながら、傘に隠れてキスをした。
二人のキスを見ていたのは、当分降り止みそうにない雨だけ。
「帰ったら、ロードバラしてメンテやね」
御堂筋は何事も無かったかの様に坂道の手から折り畳み傘を取ると、雨粒を振り払い、畳みながら言う。
「その前にお風呂だね…一緒に入る?」
先にロードに乗って屋根の下から出た坂道は、また電車で帰れと言われないように雨に打たれながら笑う。
呆れながら、御堂筋は坂道に聞こえないように呟いた。
「何でも一緒一緒て…それ、メンテ出来なくなるコースや」



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