ささやかな幸せ
睡眠は体力回復に欠かせない。
だからボクは何があっても決まった時間には床に入る。
時間は違えど、誰にもうるさく言われない環境で自分を律してきたボクの幼い時からの習慣。
体を虐め抜くような練習は乳酸を生み、疲れた体を投げ出せばすぐに睡魔が襲ってきて、もう指の一本動かしたないくらいになる。
睡魔に身を任せて目を瞑ればすぐに朝がやって
きて、またロードに乗れる体になるのだからそうしてしまえばいいのに、ボクはそうしないでいた。
聴覚だけは研ぎ澄まされていて、居間の時計が刻む振り子の音までが耳に届く。
コッ、コッ、コッ、コッ…
一定のリズムを刻む振り子の音。
しばらくすると時計の針がカチッ…と僅かな音をたて、23時を知らせる鐘を鳴らそうとする。
けど、その鐘の音はもう耳に届かなかった。
代わりに耳に入るのは、ピロン…とメールの着信を知らせるマヌケな機械音。
ボクは動かしたくなかったはずの指でメールを確認すると、真っ暗な部屋の中に光を放つ液晶に表示された文字がぼんやりと目に写す。
『おやすみなさい』
毎日同じ時間に受信するメールは内容も毎日同じで、いちいち確認するのも鬱陶しいほど短い。
このメールがなければ、ボクはもう少し早く眠れるのにと、早く床に入った日は特に恨み言が頭を過るけど、ボクは毎日同じメールを眺める。
そして、返信をしない代わりに目を閉じながら呟く。
「おやすみぃ、坂道」
END
だからボクは何があっても決まった時間には床に入る。
時間は違えど、誰にもうるさく言われない環境で自分を律してきたボクの幼い時からの習慣。
体を虐め抜くような練習は乳酸を生み、疲れた体を投げ出せばすぐに睡魔が襲ってきて、もう指の一本動かしたないくらいになる。
睡魔に身を任せて目を瞑ればすぐに朝がやって
きて、またロードに乗れる体になるのだからそうしてしまえばいいのに、ボクはそうしないでいた。
聴覚だけは研ぎ澄まされていて、居間の時計が刻む振り子の音までが耳に届く。
コッ、コッ、コッ、コッ…
一定のリズムを刻む振り子の音。
しばらくすると時計の針がカチッ…と僅かな音をたて、23時を知らせる鐘を鳴らそうとする。
けど、その鐘の音はもう耳に届かなかった。
代わりに耳に入るのは、ピロン…とメールの着信を知らせるマヌケな機械音。
ボクは動かしたくなかったはずの指でメールを確認すると、真っ暗な部屋の中に光を放つ液晶に表示された文字がぼんやりと目に写す。
『おやすみなさい』
毎日同じ時間に受信するメールは内容も毎日同じで、いちいち確認するのも鬱陶しいほど短い。
このメールがなければ、ボクはもう少し早く眠れるのにと、早く床に入った日は特に恨み言が頭を過るけど、ボクは毎日同じメールを眺める。
そして、返信をしない代わりに目を閉じながら呟く。
「おやすみぃ、坂道」
END
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