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目覚まし時計

子供の頃買ってもらった僕の目覚まし時計はいつも6時45分にセットされてる。
だけど、その目覚まし時計の音で最後に起きたのはいつの事だったか…。
僕の毎日の起床時間は6時30分。
いつもメールの着信音で目を覚ます。
ロードの練習で疲れているせいか、夜中に迷惑メールが届こうとも起きない僕が毎朝6時30分に鳴るメールの着信音は聞き逃さず目を覚ますのは、着信音を他の着信音と変えてるせいだけじゃないと思う。
毎日届くメールの文章はいつも一緒。

『いつまで寝てるん?』

僕は毎朝この短いメールに『今日は天気いいね』とか『今朝は冷えるね』とか返信を送ると、まだ鳴らない目覚まし時計を止めてしまうから、目覚まし時計の音は久しく聞いていない。

ジリリリリリッ…

けたたましく鳴る音。
それが久しぶり過ぎて自分の目覚まし時計の音だと理解するのに少し時間が掛かった。
けど、その音は目覚まし時計に手を伸ばさなくても勝手に止まったから、空耳だったのかもと思った僕はまた夢の中に戻ろうとしていた。
目を閉じていても辺りが明るくなってるのは分かっていて、そろそろ起きる時間かもしれないとは思ったけど、今しがた見ていた夢はとても幸せな夢で、ふかふかの布団の中で御堂筋くんの長い指が僕の頭をゆっくり撫でてもらっている夢だったから目を覚ますのは勿体ないと思った。
せめて本物の御堂筋くんからのメールが来るまでは夢の続きを見ていたい。

「いつまで寝てるん?」

メールの着信音はない。
しかも、メールの文章が音声として耳に届く。
何かがおかしいと思った僕がゆっくりと目を開ける…と、目の前には、御堂筋くん。
「うわぁぁぁぁぁぁあ!」
僕は飛び起きて、寝起きの頭をフル稼働させ思い出す。
今日は、御堂筋くんが僕の家に泊まりに来てるんだった!
御堂筋くんはお母さんがベッドの脇に用意してくれた布団を頭から被りながらベッドの端に肘を付き、焦る僕を呆れた様に見ていた。
「ボクが起こさんと、毎日寝坊するんやない?」
「あー、えーと…御堂筋くん、何時から起きてたの?」
「もう20分以上前から坂道の頭撫でとったわ」
その言葉に僕はパニックで忘れかけた今しがたの夢を思い出す。
「あれ、夢じゃなかったの!?」
「はぁ?どーいう夢みてるんよ、やらしいな」
「や…やらしいって…実際してたの御堂筋くんでしょ?」
「ほんまやねー」
御堂筋くんの毒舌にも慣れてきた僕が反論しても、吹けない口笛を吹いてちゃかしてくるから結局敵わない。
僕は不貞腐れる様に再び布団に潜り込むと、八つ当たりの様に御堂筋くんに言った。
「もう!勿体ないから、起きてる時にやってよ!」
せっかくならぼんやりした夢じゃなくて、現実として認識したい。
そんな僕に御堂筋くんは呆れた顔をしながらも、長い指で僕の頭を撫でて言う。
「いつまで寝てるん?」
今日は二人で秋葉原に行く予定だけど、もう少しこうしていたいと思う。



END
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