secret smell
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私は手に持っていた野菜を床に落としてしまった。
心臓がドキドキとうるさい。
本当に今日のサンジくんはどうしたのだろう。
「サンジくん……?」
食料庫のドアは開いたまま。
向こうから、皆の声が聞こえる。
見られてもおかしくない。
でもなぜか私は
腕を振り払うことができなかった。
「もっと触れたいと思ってるのはおれだけか?」
彼の切ない声に、心臓がドキドキと反応する。
顔を上げれば
ゆっくりとサンジくんの顔が近付いてきた。
キス?しようとしてる?
鼻先が触れる。
ダメ。
ご飯食べたばかりだし
リップも塗ってないから唇カサカサだし
何より、ドアが開いていて
見えるわけではないけど、向こうには皆もいる。
私はつい顔を逸らしてしまった。
「………ごめん。」
「ミドリちゃん、おれのこと嫌いか…?」
「そ、そんなわけない。大好きだよ。」
こんな状況でそんなことを言っても
説得力のカケラもない。
サンジくんはフッと笑うと、私から離れた。
「もう、今日は手伝いはいいよ。ありがとな。」
私が落とした野菜を拾い
食料庫から出て、仕込みの続きをしはじめた。
今度こそ怒らせてしまった。
ーーーーーーー
——次の日。
昨晩は、あまりよく眠れなかった。
サンジくんはもう朝食の支度をしている頃だろう。
重い足取りでキッチンへ向かう。
「おはよう。」
ドアを開けて中に入ると
キッチンにいたサンジくんが早足でこちらへ来て
思いっきり頭を下げた。
「ミドリちゃん、昨日はごめん!」
「サンジくん?」
「誰かがいるときはああいうことはしねェって
約束したのに、理性も保てねェで
おれのしたいことばかり押し付けてた。
許してくれ。」
「そんな…サンジくんは悪くない。
私も…頑なに拒否しちゃってごめん……」
同じように頭を下げる。
「とにかくもう、ミドリちゃんが
嫌がることは絶対にしないと決めた。
だから、これからもよろしくな。」
「ありがとう。」
笑顔で見つめ合う。
彼の優しさが嬉しい。
何よりも大切にされていると実感できる。
2人、顔を見合わせて笑う。
またいつものようにキッチンに並んで立ち
朝食の支度を始めた。
それから一週間
サンジくんは私に全く触れてこなくなった。