最終章 〜別れとはじまり〜
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ばあちゃんが亡くなってから1ヶ月以上が経つが
ミドリが診療所に来ることはなかった。
「まだミドリちゃんは戻らないのね。」
「あァ。ばあちゃんを亡くしたばかりだからな。」
診察に来た患者たちも
ミドリがいないことを寂しく思うようで
気にかけてくれることも多い。
「ワシ、この間家に様子見に行ったよ。近所だからな。」
「……元気そうだったか?」
「笑ってたけどよ、まぁ無理はしてるだろうよ。」
「そうか……」
「大丈夫なの?」
「…まぁ、強い女だ。心配ない。」
「ミドリちゃんじゃなくて、あなたがよ!マルコちゃん。」
「俺が?」
「あの子がいなくて寂しいのが見え見え。」
「そんなことねェよい。」
「強がっちゃって。ダメね、男の人は。女がいないと。」
「うるせェ。」
笑って誤魔化したが図星だった。
診療所はあっという間にミドリが来る前の
片付けが行き届かない状態に戻っちまったし
食事も、ろくなもんを食べてねェ。
何より
あの笑顔がそばにないと落ち着かない。
「正直になりなさいよ。」
ばあちゃんに腕をバシっと叩かれる。
正直に、ねェ…
あの日ミドリは
俺を好きだと言ってくれた。
——おふたりの分も、一緒にいます。
——そろそろ、自分の幸せを
考えてもいいんじゃないですか?
——私がマルコさんを幸せにしたいです。
あんなに嬉しい言葉を並べてくれていたのに
俺はあの時、自分のことでいっぱいいっぱいで
ちゃんとミドリに向き合えていなかった。
ミドリからしたら、フラれたと思っているだろう。
ばあちゃんが亡くなった日
俺たちはもう何の関係もないと言っていた。
どうしてあの時、俺は否定しなかったんだ。
そばにいたいと、どうして言わなかった。
待ってる、なんて言ったところで
フラれたと思ってる相手のところへ
戻る気になんかなれるわけねェ。
「最低だ、俺は……」
気付けば、走り出していた。