最終章 〜別れとはじまり〜
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「ありがとうございました。」
ばあちゃんの寝室からひとり出てきたミドリが俺に頭を下げた。
「マルコさんがいなかったら、もっと早くお別れが来ていたと思います。本当に感謝してます。」
「感謝されるようなこと、俺は何もしてねェよい。」
「そんなことないです。私の嘘にも付き合ってもらっちゃったし。でも…この関係も、もう終わりですね。必要なくなっちゃった。」
ミドリは涙を見せなかった。
強がって我慢しているのか
まだ現実を受け止めきれてねェのか。
とにかく無理に笑顔を作ろうとするその姿に
俺の胸が締め付けられる。
「お葬式が終わるまで、このまま診療所はお休みさせてもらいますね。」
「もちろんだ。気持ちが落ち着くまでゆっくりするといい。」
「それとも…もう私とマルコさんは何の関係もないし、診療所へ行くのもやめたほうがいいですか?」
「……好きにするといいよい。ただ…他に行き場がないなら、いつでも来るといい。」
ミドリはそれ以上話さなくなった。
下を向いたまま
ただ一点を見つめて。
俺の声も聞こえているのか、いないのか。
「……待ってるよい。」
最後に一言そう告げて
ミドリの家を後にした。
「クソッ!」
家から離れたところで壁を叩く。
失う辛さは誰よりもわかっているはずなのに
かけてやれる言葉も見つからない。
なにが医者だ。
結局最後は2人にしてやることしかできなかった。
なにが不死鳥だ。
自分は再生できたって、誰かの怪我や病気を完全に治してやることもできねェ。
好きな女の
笑顔を守ってやることもできねェ。
あの時もそうだった。
俺が不甲斐ないせいで
大事な2人を目の前で失った。
もう、誰かを失うのは嫌なのに。
ミドリの涙を堪える顔が
頭から離れない。
「そばにいてやりてェ。」