木兎光太郎に溺愛される女の子【連載中】
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番外編 〜あの時の木兎さん その2〜 ※赤葦視点
「烏野の主将ってさ、皆に肉まん奢ったりしてるらしい!俺もお前らに何か奢りたい!」
練習中、木兎さんが突然そう言い出した。
木兎の気まぐれが始まった…と先輩たちはボヤいていたけど、せっかく奢ってくれると言っているのを断る理由はなく、部活帰りにレギュラー全員でラーメン屋へ行くことになった。
全員分のラーメン代なんて持ってるのか…
と心配になりながらも、部活後のしょうゆラーメンは驚くほどに美味しかった。
案の定、木兎さんの手持ちでは足りなくて、結局それぞれ自分で支払いをした。
「烏野の主将って、実はすげぇ金持ちのおぼっちゃんなのかな」
少ししょぼくれながら財布をしまい、木兎さんが呟く。
「どうでしょうね。まぁ、肉まんとラーメンじゃ値段が違いますから」
「そうだよな!つーか、うまかったな!」
そう笑う木兎さんの隣で、俺はたまにはこういうのも悪くないと思っていた。
「赤葦、夏休みに苗字と遊んだりしねーの?同じクラスだろ?」
すっかり暗くなった夜道を歩きながら唐突に木兎さんがそう聞いてきた。
「クラスは同じですけど、そういう仲ではないですね」
「なんだよー。そしたら俺も混ぜてもらおうと思ったのによー」
「そもそも部活ばかりで誰かと遊ぶ時間なんてないです」
「まあなー」
木兎さんは空を見上げながら、夏休み前に苗字さんと昼休みを一緒に過ごした話をしてくれた。
幾度となく誘っても来てくれなかった苗字さんがやっと誘いに応じてくれて、すごく嬉しかったようだ。
「弁当食べた後にバレーしたんだよ」
そう聞いた時、俺は少し苗字さんに同情した。
「レシーブ下手くそだから、こうやって教えてたんだけどさ」
そう言いながら両腕を前に伸ばして何かを掴むような動作をする。
「なんか全部小さくて、びっくりしたんだよな。手首なんかこんな細くて、折っちまうかと思った」
冗談抜きに、木兎さんならやりかねない、とゾッとする。
「びっくりしすぎて、俺動けなくなっちまって」
それまで楽しそうに話していた木兎さんの表情が、眉間に皺を寄せてだんだんと不安げなものに変わっていく。
「何がびっくりって、すっげーいい匂いすんだよ。髪の毛がふわってなると……なぁ赤葦、俺って変態?警察に捕まる?」
「いえ、その程度ならたぶん大丈夫です」
「あー思い出したらまた会いたくなったなー」
本当に、彼女を好きなんだな。
「夏休みが終わるのを待つしかありませんね」
「なぁ、あの後ろ姿。あいつじゃない?」
木兎さんがふと正面を見て目を見開く。
同じ方を見ると、確かに後ろ姿は苗字さんに見えなくもない。
「噂をすれば、ってやつだ」
「……まぁ似てますけど、人違いじゃないですか?」
だって、男の人と歩いてるし…
木兎さん、そこまで見えてるのか?
「会いたすぎて、幻覚見てんの?俺」
「それは心配ですね」
「ちょっと声かけてくる」
「えっ、違ったらどうするんですか?」
走り出す木兎さんを慌てて追いかける。
追いついた先は、本当に苗字さんだった。
「あ、木兎さん!赤葦君もいる」
その隣にいるのは、やはり男の人。
見たところ、年上のようだ。
恐る恐る横を見るとショックを受けて固まっている木兎さん。
やっぱり、隣までは見てなかったか……
そこから苗字さんが話しているのに、木兎さんは心ここに在らずの状態で、俺が適当に話をして早々に2人とは別れた。
「………」
「………」
「彼氏かな」
「……そう見えましたけど…」
「嫌だ」
ポツリとそう呟いたかと思うと
「絶対イヤだ!!」
突然大声で叫んだ。
「木兎さん、声が大きいです」
「あいつ、苗字とチュウとかするのかな」
「っ!!」
驚いた。
ポロリ、と木兎さんの瞳から涙が流れたから。
「……そ、そこまではなんとも」
「いやだ〜!!」
「静かにしてください!」
その後、すっかり元気をなくしてしまった木兎さんをなんとか家に帰らせた。
次の日からの部活にも身が入らないようで、ミスを繰り返し、コーチに叱られてばかり。
木兎さんの調子が戻ることのないまま、残り少なかった夏休みが終わった。
もうすぐ春高の予選も始まるって言うのに……
梟谷学園高校バレー部は今、絶望的だ。
