木兎光太郎に溺愛される女の子【完結】
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
番外編 〜あの時の木兎さん その3〜 ※赤葦視点
春高予選に向け毎日練習に励んでいる中
体育館の設備点検のため、久しぶりに日曜に休みがあった。
次の日の部活では「友達と遊びにいった」だとか
「結局、市民体育館へバレーしに行った」だとか
部員たちが久々の休日の報告をしあっていた。
そんな中
「昨日はすげーいい休日だった!」
木兎さんは誰よりも満足げな笑みを浮かべている。
苗字さんと2人で出かけることができて、いわゆる”初デート”を楽しんだそうだ。
正直、俺は驚いた。
「休日に2人で会うなんて、そこまで関係が進んだんですね」
「そうなんだよ。俺、頑張ったよな」
「はい、頑張りましたね」
本当にそう思う。
木兎さんが猛アタックしている姿はもはや日常茶飯事だったが、苗字さんの方はいつもほとんどノーリアクション。
むしろ、木兎さんのアピールを少し困っているようにも見えていた。
それがまさか、デートの誘いを受けてくれるなんて。
このまま関係が進めば…と希望が見えてきている。
「もしかして、付き合えそうなんですか?」
自信満々に、木兎さんはグッと親指を立てた。
「作戦があるんだ」
「作戦?」
「俺、考えたんだ。”押してダメなら引いてみろ”って言うだろ?俺は苗字と付き合いたい一心で、ちょっと押しすぎてたとこあるから」
自覚あったんだ……
「引いてみることにした!」
もう一度、木兎さんはグッと親指を立てる。
「えっと…具体的には?」
「俺からは会いに行かない!」
「はぁ」
「学校で見かけても、話しかけない!」
「なるほど」
すごく単純だ。
しかし、木兎さんなりに一生懸命考えたんだろうし、俺ができるのは見守ることだけだ。
ーーーーーーーーーー
それから数日後の放課後。
部活へ行く準備中、苗字さんが俺に声をかけてきた。
「……木兎さんは元気?」
驚きのあまり、一瞬言葉を失った。
元気は元気だけど、毎日苗字さんのことばかり聞いてくるよ。苗字さんは教室で元気に過ごしてるか、とか、寂しそうにしてないか、とか、俺のこと気にしてないか、とか。会いたい会いたいうるさいくらいで……と、そう言いたい気持ちをグッと堪えて、笑顔を作る。
「すごく元気だよ。調子もいい」
ごめんね、苗字さん。
木兎さんの努力が水の泡になってしまうから、本当のことは言えないんだ。
申し訳ないと思いつつ体育館へ行くと、当の本人はものすごくしょぼくれていた。
すごいですよ!木兎さん!
まさかの効果てきめんです!と、伝えたい気持ちを抑え、冷静に声をかける。
「どうしたんですか?木兎さん」
「苗字のことだけどさ……」
まぁ、そうだろうと思ったけど。
「今”押してダメなら引いてみろ作戦”の真っ最中だろ?」
「そんな作戦名だったんですね」
「だけどさ、俺から会いに行かないと苗字から来てくれることなんてないし、全く会えないことに気付いた……」
「……まぁ、それは寂しいですね」
「そうなんだよ!寂しいんだ!明日あたり、昼飯誘うかな」
「えっ、その作戦、まだ一週間くらいですよね」
「えっ、まだそれしか経ってないの?」
「もう少し耐えてみたほうが……」
「でも、そろそろ限界だ……」
「………」
——木兎さんは元気?
苗字さんのあの様子は、絶対に木兎さんを気にしていた。
このよくわからない作戦、確かに効果はあるように感じる。
きっともう少しです、木兎さん。
「もう少し頑張ってください。もしかしたらそろそろ苗字さんも、木兎さんのことが恋しくなってくるかもしれません」
「本当か?」
「本当です。あと一週間は我慢してください。俺を信じて」
「赤葦、今日もカッケーな!」
ーーーーーーーーーー
一週間後。
部活にやってきた木兎さんは、いつも以上に元気だった。
「赤葦!お前の言うとおりだったぞ!!」
これはきっとまた、苗字さんの話だろう。
「今日の昼休み、苗字が俺に会いにきてくれた!」
「それはすごい!よかったですね」
まさか本当に”押してダメなら引いてみろ作戦”がうまくいくなんて。
「俺に会えなくて寂しかったんだってよ」
「すごい進歩ですよ。本当に」
「でもギューはさせてくれなかった」
「大丈夫。それもきっと、時間の問題です」
「だよな!!この勢いで全国優勝だ!今の俺、最強!!ヘイヘイヘーイ!!」
それからの木兎さんの調子の上がり方はすごかった。苗字さんに感謝だ。
そんな木兎さんに釣られるように、全体の士気も高まる。チームの雰囲気はとても良い。
いよいよ、春高が始まる。
