及川徹と友達の彼女【連載中】
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episode.05「高二の夏」
——夏休み
「今頃は全国で戦ってるはずだったのによー!」
「ウシワカめー!」
インターハイは予選決勝で白鳥沢に敗れ、全国に行く予定がなくなってしまった俺たちは、半分八つ当たりをするように練習に没頭していた。
「明日休みだし、5人で海でも行かね?」
片付け中、モップの柄の先に顎を乗せながら、マッキーがいつものごとく提案してきた。
「たまの休みくらい2人にしてやれよ」
岩ちゃん、今日もど正論。
「2人でデートの予定だった?」
ボールカゴを片付けているまっつんに話を振る。
「どこか出かけようかとは話してたけど、行き先はまだ決めてない」
「じゃあ、いいじゃん!海!」
「まぁ賛成すると思うよ。後で伝えとく」
まっつんは自分の彼女の方を見る。
名前は体育館の隅で監督とコーチに何やら相談しているところだった。
多分、夏休み合宿のことだろう。
「ねぇ、それって俺と岩ちゃんは強制参加?」
「あ?どうせ暇だろ」
「失礼だね!暇だけど!」
「うし!ビーチバレーで勝負だ」
ーーーーーーーーーー
次の日。
バスに乗って地元の海水浴場へとやってきた。
どこまでも続く砂浜。賑わう海の家。
ビーチバレーのネットもちゃんと張ってある。
「この辺りにするか」
海の家のそばに適当なスペースを見つけ、まっつんが持参してきたレジャーシートを広げる。
「松川、準備いいのな」
「そりゃ大事な彼女もいるもんね〜」
「そういえば、苗字さんは?」
「更衣室で着替えてくるって」
「待ってらんねぇ。バレーするぞ」
「海に来てまで結局バレーかよ」
「先行ってていいよ。俺、待っとくから」
シートにまっつんと荷物を残し、俺たち3人はビーチバレーをしに向かった。
「まっつんいないと2対1じゃん」
「俺ひとりでいい。十分だ」
と、強気な岩ちゃんを相手に俺とマッキーがチームを組み、いつもの本気バレーとは違う、お遊びのビーチバレーが始まった。
「うえーい!また1点!」
「クッソ!お前らクッソ!!」
さすがの岩ちゃんでもひとりでは試合にならず、結局俺たちが圧勝していると名前の声が響いた。
「私もやる!」
まっつんとともにやってきた名前の姿に3人の視線が集まる。
全体的に淡い水色を基調とした水着。
フリルがヒラヒラと揺れるタンキニタイプで、ビキニほど露出はないけど、スラリと伸びた白い腕と足に目がいってしまう。
中学の頃に散々見てきた、バレーのユニフォームとそんなに変わらないはずなのに
なぜか俺は直視できなかった。
「苗字さん、水着かわいいね」
「え、そうかな。ありがとう」
マッキーにさらりと褒められ、少し恥ずかしそうに水着の間から覗くおへそを隠すよう手を添えた。
「お前ら、こっち入れよ。こいつらけちょんけちょんにすんぞ」
まっつんと名前 が岩ちゃんのコートに入り、形勢逆転。
名前もバレーをやっていただけあって、ちゃんと戦力になっていた。
結果、俺とマッキーのボロ負け。
「あっちー!汗だく!」
「海入るぞ」
「ちゃんと給水してからね!」
「さすがマネージャー」
松川と名前は浮き輪を持って先に海へと向かった。
俺と岩ちゃんとマッキーはシートに座り、水分補給をしながらその様子をぼーっと眺める。
「普通に羨ましいよな。あの2人」
マッキーが言った。
確かに、誰がどう見ても幸せそうなカップルだし、大人びているまっつんに名前は釣り合わないんじゃないかと思ってたけど……
「なんか……名前もちゃんと女だったんだね。いつの間にか色々育ってる」
つい思っていたことを言うと、岩ちゃんがドン引きした顔で俺を見る。
「お前、松川に刺されるぞ」
「それは痛そう」
浮き輪をつけた名前をまっつんが支えながら、沖の方へと小さくなっていく。
なんだかもう、完全に2人の世界って感じ。
2人が幸せなのは良いことだけど、俺たち3人がだんだんと惨めに見えてくる。
「もうチュウとかしたのかな」
またマッキーが、惨めったらしく呟いた。
「付き合って3ヶ月か。まっつん、意外と奥手ってことは……」
「「……ないな」」
……そうか、もうキスしたりしてんだ。
もしかしたら、あの体に触ったりも……
うわ、何想像してんだ、俺。
さすがにキモい!やめよう!刺される!
「海入ろ!思いっきり泳いでくる!!」
俺は勢いよく立ち上がり、2人を置いて海へ向かって走り出した。
ーーーーーーーーーー
「じゃ、また明日」
「今日は誘ってくれてありがとう。楽しかった」
「お疲れ〜!」
「また明日な!」
名前とまっつんは2人で帰って行った。
俺と岩ちゃんの方が名前の家に近いし、まっつんは遠回りになっちゃうけど
そうだよね。今はもう、これが自然な形なんだ。
マッキーと別れ、岩ちゃんと歩き出す。
「……お前と2人か」
「嫌なの!?」
「大抵名前もいたからな」
「……まぁね」
岩ちゃんの言いたいことは、なんとなくわかる。
いつも一緒にいたのに、それが突然なくなると、寂しいのとは少し違うけど、どこか物足りない。
そんな気持ちになる。
今日一日、名前とまっつんの2人を見ていて思った。
名前のあんなにも幸せそうな顔は見た事がなくて、なぜか少し悔しかった。
あいつにとって、今一番心地いい場所。
それは俺たちじゃなくて、まっつんの隣なんだって、思い知らされたような気がして。
だって俺たちには、あんな顔はさせられないから。
同時に、名前をちゃんと大事にしてくれているまっつんに対して、感謝の気持ちも湧いた。
さすが俺の友達!って思うし、まっつんなら安心して名前を任せられる。
でも、やっぱりちょっと悔しい…
この頃から、自分の中に芽生え始めた複雑な感情がうっとうしくて、考えないようにしていた。
名前の幼馴染として、温かい目で2人を見守っている
つもりだった。
それが、高二の夏の話。
