岩泉一にフラれた女の子【連載中】
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episode.04「並んだ名前」
「じゃあ次は、図書委員だな」
進級して最初に行うことのひとつ、委員決め。
できることならやりたくはないし、やるのであればなるべく楽なものがいい。
生徒のほとんどがそのような思考になる。
図書委員というのは図書室の受付業務もあれば、定期的な本棚の整理など、図書室の管理が主な仕事。決して楽とは言えない委員会だ。
「図書委員は2人だ。やりたいヤツー」
担任からの問いかけに名前はスッと手を上げた。
本が好きで図書室はよく通っているし、何より昨年も図書委員を経験しているので抵抗もない。
何も部活に所属しておらず、バイトもしていない名前は、自分がやるべきだと思っていた。
「ありがとうな。苗字は決まりだ。あと1人、誰かいないか?」
「図書委員か〜」
「ちょっと面倒そうだよな〜」
「図書室とか行ったことないし」
できれば避けたい、という空気がクラスに流れる。
「仲良くなるチャンスじゃん?」
「でも本とか興味ねーしな…」
「興味なくても適当にやりゃいいんだろ?」
岩泉は後ろからコソコソと聞こえる話し声に耳を傾ける。
つい昨日、名前に絡んでいた2人の男子生徒、高野と赤井だ。
「それにほら。一緒に委員とか、それきっかけで付き合っちゃったりして」
「ある?ワンチャンあるか?ならやっちゃうか?」
赤井にのせられ、高野の方が手を挙げるか迷い始めたので、岩泉は立ち上がった。
「俺がやる」
なぜそんな行動を取ったのか、自分でも不思議だった。
考えるよりも先に体が動いた感じだ。
誰と誰が付き合うとか興味はないが、コイツらの思い通りにいくことはなんとなく嫌だった。バレーのことを″ボール遊び″とバカにしてきたヤツらだからだ。
「岩泉。お前、バレー部の副主将もやってんだろ?無理しなくていいぞー。他に誰か」
「いいんだよ、先生。俺がやるよ」
担任は気を遣ったつもりだったが、岩泉から圧力を感じ「なら、頼むな」と受け入れた。
黒板に書かれた
図書委員 苗字 岩泉
並んだ名前に一番驚いているのは名前だった。
驚きを隠せないまん丸の目で岩泉の方を見ると、チラリと目が目が合う。
慌てて下を向いた。
はーちゃん、どうして……
本なんて興味もなさそうだし、きっとバレーも忙しいのに……
ーーーーーーーーーー
それから数日後——
「苗字、急だが今日の放課後、図書委員の集まりがあるそうだ。場所は図書室な。岩泉にも伝えておいてくれるか」
「あ、はい。わかりました」
休み時間に廊下ですれ違った担任からそう告げられ、途端に緊張が走る。
岩泉への伝言、そして放課後に2人で委員会に出席するという2つの大きな使命を課せられ、穏やかだった一日が途端に心の休まらない日となってしまった。
とにかく、まずは先生からの伝言を伝えるため、自分から岩泉に声をかけなければならない。
教室に戻ると岩泉は自席にいて、目の前に立つ誰かと話をしている。相手は名前も知っている人物だった。
隣のクラスの及川徹。
バレー部主将で岩泉の親友でもある。
同学年に彼を知らない人はいない。
名前は一度立ち止まり、機をうかがう。
どうしよう…
ひとりでいる時の方が声をかけやすいけど、今日の放課後のことだし、なるべく早く伝えないと……
でもきっと、部活の話をしてる。
邪魔しちゃ悪いよね……
そうこうしているうちに、名前の視線に及川の方が気が付いた。
「ん?どうしたの?俺に用かな?」
懐っこい柔らかな笑顔に少し安心し、名前は2人のもとへ駆け寄った。
「あの…岩泉君に」
「おう、どうした」
あっけらかんと岩泉が返事をし、及川は驚いたように一瞬固まった。
「えっ!岩ちゃんに女の子の友達なんていたの!?」
「うるせぇ。用は済んだろ。テメェはさっさと教室戻れ」
「あ、大丈夫!先生からの伝言伝えるだけだから。えっと…今日放課後に図書室で委員の集まりだって。よろしくお願いします」
「わかった」
「じゃあ、邪魔してごめんね」
「ぜーんぜん。またね〜」
岩泉の代わりに返事をしながら手を振る及川へ向けて控えめに手を振り返しながらその場を離れる。
とりあえず、ひとつ目の使命を無事果たせたことに、ホッと胸を撫で下ろした。
及川がいてくれた方が、かえって声をかけやすかったかもしれない。
「岩ちゃん、委員会入ってんの?」
「成り行きでな。心配すんな。部活に支障はきたさねぇよ」
「別に心配はしてないけど、あの子と一緒に?」
「まぁな」
「も〜、だったらもっと優しくしないと」
「あ?」
「だって明らかにあの子、岩ちゃんのこと怖がってたじゃん!なかなか声かけられない、って感じだったよ。どうせ気付いてなかったんだろうけど」
「知るか。いいからテメェはいい加減消えろ」
「いや、言い方!」