国見英と学校一の美少女【完結】
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episode.10「やらかした」
とぼとぼと歩いていく後ろ姿を、国見は改札口から見送っていた。
次に会えるのは9月か……長いな。
と、そんなことを考えてしまったことに驚いた。
同時に、名前に対する自分の気持ちを思い知る。
もっと会いたいと思ってるんだ。
一緒にいたい、と。
それからの国見の行動は早かった。
すぐにスマホを取り出し、改札にかざして中に入った。
ホームへ降りるなりその姿を見つけ、隣へ。
「…………え、どうして…」
案の定、名前は驚いた顔で国見を見上げた。
「……俺も乗る」
そう言うと、余計に困惑した表情を浮かべる。
「よく考えたら電車内も割と変なヤツいるよな、と思って」
「……ありがとう」
まさか「もっと一緒にいたい」なんて言えるはずもなく、苦し紛れの言い訳だったが、名前は嬉しそうに頬を緩ませた。
「……どうせ暇だし」
顔が熱い。
ほてった頬を冷ますように手で仰ぐ。
と、ほどなくして電車が到着した。
帰宅時間ということもあり座席は空いておらず、車内はそれなりに混んでいた。
乗り込んできた名前へ、乗客たちがチラチラと目をやる。本人は慣れているのか、または気がついていないのか、全く気にしていない様子だが、国見はその視線が気になった。
やっぱり、誰がどう見ても可愛いもんな、と思った。
乗り込んだドアとは反対側のドア横のスペースへ行き、名前を壁側に立たせ、自分は吊り革に掴まり、持っていたボストンバッグを両足の間に置いた。
以前学校の廊下でそうしたように、周りの視線から彼女を隠したかった。
「結構、混んでるんだな」
「うん、いつもこんな感じだよ」
電車が走り出し、車体の揺れに合わせて同じように2人の体が揺れる。
国見は目の前の名前を見た。
狭い電車内のせいか、いつも以上に近くに感じる。
見つめれば見つめるほど、胸が高鳴ってくる。
可愛い。
この容姿に何人もの男が恋をしたんだろう。
俺もそのひとり。
いや、一緒にはなりなくない。
俺はもう、容姿だけじゃない苗字のいいところをたくさん知ってる。
男が苦手なのに、俺にだけ話しかけてくれる。
数学が苦手。でも頑張ってる。努力家。
すっげー素直。言葉が全部真っ直ぐで正直。
無口かと思いきや、慣れた相手には意外と喋る。
で、よく笑う。
笑った顔が超絶可愛い。
俺が笑わせたい、って思う。
いつの間に、こんなに惚れ込んでいたのか。
「………」
「………」
ふと顔を上げた名前と目が合い、焦ったのか、恥ずかしそうにすぐに逸らされた。
こういう反応も、全部が可愛いくて
もっと、色々な彼女を見たくなる。
国見は衝動に駆られるように、手を伸ばした。
まっすぐに下ろされていた名前の手を、そっと握った。
「!」
自分の手の中に簡単におさまってしまう小さな手を、感触を確かめるように、できるだけ優しく握る。
その指先はひんやりと冷たくて、自分との体温の差を感じた。
柔らかな感触に、どんどん鼓動が速くなる。
「あ、あの……」
気付くと、困惑した表情で名前がこちらを見上げていた。
瞬間、国見は我に返り手を離す。
「っ…ごめんっ」
すごく焦った。
まさか自分が、理性を失って勝手に彼女に触るなんて。
そういえば、前にもあった。
キャラメルで膨らんだ頬が可愛くて、つい触れてしまった。
彼女を前にすると、自分で自分を制御できなくなるんだ。
「本当、ごめん」
国見がもう一度謝ると、名前は顔を真っ赤にしながら首を横に振る。
そしてそのまま俯き、それ以上口を開くことはなかった。
「送ってくれてありがとう。国見君はこのまま戻るよね?」
「うん」
「じゃ、また2学期ね」
駅に着き、電車を降りても名前はまだ戸惑っているようで、国見の顔を見ようとしなかった。
「本当にごめんな。さっきの」
「大丈夫だから。気にしないで」
最後に無理に作ったような笑顔を向けて、ホームを去っていった。
「………」
彼女が階段を駆け上がり見えなくなると、国見はその場にしゃがみ混んで頭を抱えた。
やらかした…
絶対に嫌われた…
変なヤツから守るためにここまで送ってきたのに、あれじゃ変質者は自分だ。
左手にはまだ、小さな手の感覚がしっかりと残っている。
柔らかい手のひらに、細い指。
思い出すだけで、顔が熱くなる。
衝動を抑えられなかった。というか無意識だった。
可愛くて仕方なくて、触れたくなって
手を伸ばせば触れられる距離にいたから。
「あーあ………」
そのまま駅のホームでしばらく途方に暮れていた。
もしかしたら、夏休みが終わっても
二度と話しかけてくれないかもしれない。
