国見英と学校一の美少女【完結】
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episode.09「触れてみたいです」
初めての恋に勤しんでいる名前に、この夏休み、ちょっとした奇跡が起こっている。
——補習、あと2日だよな?
——明日も送ってく
嬉しくて、嬉しすぎて舞い上がってしまう。
でも、これ以上国見を失望させないようにと、補習2日目の今日も数学の勉強をしっかりと頑張った。
補習が終わればやっぱりそわそわと落ち着かなくて、待ちきれずに体育館まで行ってしまった。
そのせいでちょっとした騒ぎになってしまい、結局国見に迷惑をかけてしまったかと不安になりながら、駅までの道を静かに歩いた。
「………」
「………」
特に会話はないが、目と目が合えば微笑みかける。が、すぐに逸らされてしまった。
国見は常に澄まし顔。
その様子にだんだんと不安は大きくなっていった。
普段から口数の少ない国見だが、怒らせてしまった可能性もある。
考えてみれば、こうして駅まで歩いている今
国見に片思いをしている自分にとってはこの上なく満ち足りた時間だが、国見にとっては面倒ごと以外の何ものでもないのだ。
その後は顔を見上げて国見の表情を確認する勇気がないまま、駅へと着いてしまった。
「じゃあね」
「……ごめんなさい」
突然しおらしく謝る名前から先ほどの楽しそうな笑顔は消えていて、国見は少し焦った。
「え、何が?」
「今日、体育館まで押しかけてしまって…」
「あぁ。別に」
「それに、部活で疲れてるのにこうして駅まで送ってもらって……考えてみたら、迷惑だったかなって……」
「それは気にしなくていいよ。俺が好きでやってる」
「!」
予想外の言葉に顔を上げると、正面でぱっちりと目と目が合い、国見の方がすぐに視線を逸らした。
心なしか、耳が少し赤い。
「でも、まぁ…明日は別のところで待っててくれたらありがたいかも」
明日も、送ってくれるんだ……
心をぎゅっと掴まれたように、胸が熱くなる。
「俺が迎えに行くから、教室にいて」
再び視線が合い、名前はコクンと頷いた。
「ん。じゃ、また明日」
「うん、また明日」
照れ臭くて、嬉しくて緩む頬を抑えきれず、最後は変な笑顔になってしまったかもしれない。
離れるの、寂しい。
彼の背中を見送りながら、素直にそう思った。
明日も一緒に帰れる。
けど、明日が最後。
ーーーーーーーーーーー
補習3日目。
授業が終わり、皆が帰っていく中
名前は国見に言われたように教室に残って彼が来るのを待っていた。
自分以外、周りに誰もいない静まり返った夏休みの校舎内。
スマホをいじりながらしばらく待っていると、廊下から足音が聞こえ始め、だんだんと大きくなってくる。
比例して、ドキドキと自分の鼓動も大きくなる。
ガラッと控えめに扉が開き、国見が顔を出した。
「お待たせ。帰ろ」
「うん」
校舎を出て、夕陽に照らされる道を駅まで歩く。
今日が最後と思うと、なんだかいつもより寂しい景色に見えた。
「3日間お疲れ。補習」
いつもは無口な国見からそう話しかけられ、名前は少し驚きつつも返事をした。
「うん。国見君も、部活お疲れ様」
「まぁ俺は明日もあるけどな」
そう言う国見の表情はどこか不貞腐れていて、名前はつい笑ってしまう。
「部活は夏休みも毎日?」
「月曜は休み」
「休みの日は何してるの?」
「ゲームとか、漫画とか、昼寝とか。家から出ない」
答えが国見らしくて、名前はまた笑顔になった。
「苗字は?」
「え?」
「休みの日、何してんの」
「えっと…ドラマ見たり、ピアノ弾いたり……私も家から出ない」
「一緒だな」
「うん、一緒」
また、顔が綻ぶ。
いつもより、喋ることができた。
それだけのことが、ただ嬉しくて。
「苗字ってさ」
「?」
「クラスでは全然だけど、実はよく笑うよね」
「……そうかな」
……あなたの前だけです。
なんて本音は、とても言えなかった。
駅が近づいてくるころ、前を歩くカップルがどうしても目に入る。
彼女は甘えるように彼氏に寄り添っていて、2人の手はしっかりと握られていた。
羨ましい。
名前は、ふと横目で国見の手を見て考えた。
もし今、私がこの手を取ったら…どう思うかな。
……触ってみたい。
国見君に、触ってみたい。
「……じゃあね」
改札の前に着き、国見は立ち止まった。
別れの時間。
名前は寂しい気持ちを隠すよう、努めて明るく振る舞った。
「3日間ありがとうございました」
「うん」
「また、新学期ね」
最後に笑顔を向けて、向きを変え改札を通る。
次に会えるのは夏休みが明けた9月。
……長いなぁ。
そんなことを考えながらホームへの階段を降り、電車を待っていると
「…………え、どうして…」
名前の隣に大きな人影。
「……俺も乗る」
国見だった。
