国見英と学校一の美少女【完結】
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episode.02「どーでもいい」
高校生活が始まった日。
入学式が終わり教室に入った瞬間、国見はげんなりとした。
新しいクラスメイトは皆落ち着きがないのか、なんだか教室内がざわついている。
高校入学という大イベント当日だからある程度は予想していたが、思った以上にうるさかった。主に男子生徒が。
「仲良くなりてぇな〜」「こっち見ないかな」
「今!俺、目合った!絶対!」「嘘だろ」
そんな風に騒ぐ生徒たちをかき分けて進む。
どうやらものすごい美人な子がいるらしい。
注目されている子の方をちらりと見るが、自席にちょこんと座り、視線から隠れるように俯いていてその表情は髪の毛に隠れ、よく見えない。
まぁ、これだけ騒がれたら迷惑だろうな…
と哀れに思ったが、全く興味がなかったので、とりあえず鞄を机の横にかけ席に座った。
担任が来て、確認事項を終えると、ひとりずつの自己紹介が始まった。
ため息を吐きながら頬杖をつき、窓の外を見た。
この儀式、必要ないよな…と、いつも思う。
今日で全員の名前を覚えられるわけがないし、別に知りたいとも思わない。
気の合うヤツとはそのうち勝手に仲良くなるだろうし。
つまらない時間を潰すよう空を流れる雲を眺めていると、教室内がワッと沸いた。
皆が美人と騒ぐ、あの子の番のようだ。
しかし、そんなことはどうでもいいし、今は空に浮かぶ雲の形が肉まんに見えるせいで、なんか腹減ってきたな……とだけ考えていた。
「明日から授業も始まるが、まずは高校生活に慣れていけるようにな!それじゃ、今日は以上!」
担任の締めの言葉で、ホームルームは終わった。
国見はいそいそと鞄を肩にかけ、教室を出る。
男子たちはまた、名前の話題で盛り上がっていた。
「彼氏はいるのか?」とか、「いないとしたら、誰が最初に付き合えるか勝負しようぜ」とか。心底どうでもいい。
これから毎日この騒がしいクラスメイト達と共に過ごすとなると気が重くなった。
はぁ、とため息をひとつ吐いて廊下へ出ると、自分を待ってくれていた金田一と目が合う。
「なんか疲れてんな」
「うん、すっげー疲れた」
「なぁなぁ、あの子、クラス一緒だろ?名前なんて言うんだ?」
金田一が目配せする廊下の先を見ると、例のあの子。
お前もかよ…と、国見は呆れた。
「知らない。聞いてなかった」
「は!?ちゃんと聞いとけよ」
「そんな1日でクラスメイト全員の名前覚えるヤツいないだろ」
「でもあの子のは覚えるだろ!うちのクラスでも話題になってるよ。隣のクラスにすごい美女がいる、って」
「ふーん」
興味ないんだからしょうがないだろ。
あの子が何かするたびに教室ざわついて面倒臭いし。
正直、同じクラスじゃない方が良かった……
「……まぁ、お前はそういうヤツだよな」
昇降口で靴を履き替え校庭へ出ると、再び名前を見かけた。
国見は特に無反応だが、金田一だけが「おっ」と反応をする。
名前の隣には女子生徒がひとり、彼女を守るように横に張り付いている。
「はい、通りまーす」「どいてどいて」と交通整理をするよう、名前目当てに集まってくる男たちをはけさせていた。
国見は冷めた目でその様子を眺めていた。
大変そうだな。あの友達も気の毒。
この光景、毎日続くの?
それともそのうち落ち着くのか?
騒ぎすぎだろ。
正直、人より美人だからなんだって思う。
と、隣で金田一が「あ、先輩たち!」と声をあげた。
そちらの方へ向き直ると、中学時代からの先輩であり、今は青葉城西バレー部に所属する3年の及川と岩泉の2人がこちらへやってくる。
「やぁやぁ!金田一に国見ちゃん!入学おめでと!」
「お前らまたデカくなったな!」
「チッス」
「どうも」
先輩に向かって深く頭を下げる金田一の隣で、国見も軽く頭を下げた。
と、及川は少し離れた人集りを指差す。
「あっちにものすっごい美少女いたけど、同じ1年生だよね?知り合い?」
「あ、国見が同じクラスッす」
金田一、余計なこと言うなよ、と視線だけで文句を言った。
「いいな!国見ちゃん!今度紹介してよっ」
「嫌ですね」
「なぜなの!?」
そんなやりとりをしていると、近くにいた1年の女子生徒が次々と声をあげる。
「あ!及川さん!」
「ほんと!及川さんだ!」
「及川さーん!」
「はいはい!及川さんだよー!」
及川がにこやかに彼女達に手を振ると、キャーっと黄色い声があがった。
そういえばこの人も、異様にモテるんだよな、と国見は思い出した。
「手振ってくれたー!」
「及川さんに憧れて青城に決めましたー!」
「そうなの?ありがとー!」
集まった数人の女子たちに愛想を振り撒く様子を
岩泉、金田一とともに少し離れた場所から見ていた。
「及川さん、中学の頃より騒がれてますね」
「女どもの気が知れねぇな。あんなんどこがいいんだ」
2人のつぶやきに、国見はクスッと笑う。
「1年生、みんな可愛いね〜」
満足気に戻ってきた及川に国見が疑問を投げかけた。
「……及川さん、女子にキャーキャー言われるのってどんな感じですか?」
「んー?まぁ、悪い気はしないよねぇ」
「デレデレしてんじゃねぇ!キモいんだよ!クソ及川!」
岩泉は尚もニヤニヤと口元が緩んでいる及川の頭をど突いた。
「岩ちゃんひどい!」
2人と別れ、金田一と歩きながら、国見は教室での名前の様子を思い出していた。
女子とは何人かと喋っているのを見たけど、男子生徒が声をかけても、反応なく俯いているだけだった。
さっきの及川さんは嬉しそうにしてたけど、あの子は男に騒がれるの、明らかに迷惑そうだったよな。
及川さんが女子にモテてるのとは全然違う感じ。
男が、苦手なのかな……
「何、考え込んでんだ?」
一言も喋らない国見の様子を伺うように、金田一が顔を覗き込んでくる。
「……確かに。俺が考えることじゃないよね」
「は?」
「どーでもいいや」
国見はひとりごとのように呟いて空を見上げる。
そこにはもう、肉まんのような雲はなくなっていた。
「腹減った。金田一、肉まん食ってこ」
「お、いいな!」
