国見英と学校一の美少女【完結】
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episode.01「男子は少し苦手です」
4月。入学式。
私立青葉城西高校の門をくぐった瞬間、少女は注目をあびた。
「うお!かわいっ!」
あぁ、気付かれてしまった……と思った。
顔を見られないよう、できるだけ俯いていたつもりだったのに。
ひとりの男子生徒が声をあげれば、他の生徒たちも集まり、ジロジロと見られ口々に反応される。
「モデルさん?女優とか?」
「お人形さんみたい」
「付き合ってくださーい」
「お前、いきなりかよっ」
「名前、気にしない!さっさと行くよ!」
「うん」
隣にいる親友に手を引かれ、2人は入学式が行われる体育館へと急いだ。
名前は苗字名前。
父は世界的にも有名なピアニスト。
その実力に加え、日本人離れした容姿端麗な外見で人気を博し、日々世界中を飛び回っている。
そんな父が選んだ母もまた美しく、明るく優しい性格から、自宅でやっているピアノ教室は遠くからも生徒が通うほどに人気がある。
そんな2人のひとり娘である名前は
小さな頃から近所でも評判の可愛らしい女の子で、15になった今ではすれ違う誰もが振り返って見てしまうほど、容姿端麗な美少女に育った。
身長は平均よりも少し低め。
父親譲りの色素の薄い栗色の長い髪は軽く巻いてあり、名前が歩くたびにふわふわと揺れる。
白いブレザーに薄茶色のスカートという品のある制服がよく似合い、彼女の容姿をさらに引き立てていた。
通い慣れた中学校を卒業し、今日から高校生となったが、名前は環境の変化は苦手だった。
案の定、珍しがられるように男子生徒たちが集まり、時には声をかけられてしまう。
憂鬱な高校生活が始まってしまった。
ーーーーーーーーーー
入学式を終え、それぞれの教室へと移動する最中、名前は再び生徒たちに囲まれていた。
「離れてください!邪魔、邪魔!!」
そう声を張り上げたのは名前の親友のマオ。
ぴったりと名前に寄り添って交通整理をするように人混みをかき分けていく。
ベリーショートの黒髪によく焼けた小麦色の肌ですらりと背が高く、サバサバとした活発な女の子という印象を受ける。
名前とは真反対のタイプだが、ふたりは家も近所で親同士も仲が良く、小さな頃から一緒に育ってきた幼馴染だ。
マオは人とのコミュニケーションが苦手な名前の世話を焼き、彼女に群がる男たちから名前を守るボディガードのような頼もしい存在でもあった。
「あー面倒くさい!早く名前の存在に慣れてくれればいいのに!」
「ごめんね、マオちゃん」
「謝らないの!あんたは何も悪くないんだから」
名前の手を引き、マオはズカズカと教室までの廊下を進んでいく。
名前の噂を聞き、彼女のことが気になる生徒たちが何人も2人の後を追いかけていた。
そのほとんどが男子生徒だ。
「ちょっと見えた!」「マジだ!めっちゃ可愛い!」などの声がまだ聞こえてくる。
名前は彼らから隠れるように下を向き、親友に手を引かれるまま教室へと向かった。
常に注目されてきた名前にとって、男子とは″厄介な生き物″だった。
ジロジロと見てくる視線。
いつも見られているから、くしゃみやあくびは自由にしにくい。
トイレもちょっと入りづらいのが日常だ。
話しかけられるのも苦手。
返答に困ることばかり言ってくるから。
少しでも返事をすると「喋った!」とか「声可愛い!」とか「俺も聞きたい!」「もっと喋って!」って大袈裟だから。
騒がれるのが嫌で声を出すことをためらっているうちに、気が付くと男子と話すことができなくなっていた。
「クラス離れちゃったから心配だよ。何かあったらすぐ呼んで!」
マオが名前の両手を力強くギュッと握ると、それに応えるように名前も力強くこくりと頷いた。
「帰り迎えに行くから、教室で待っててね」
「ありがとう」
名残惜しそうに手を振りながら、マオは1年5組の教室に入っていった。
その背中を見送った後、名前は隣の6組へ。
入った瞬間、一気に視線を注がれる。
「うわ、美人」「可愛い」「同じクラス?ラッキー!」
小さなものから大きなものまで、クラスメイトからのリアクションを浴びながら自席を探し、席に着いた。
私なんて、皆と何も変わらないのに…
むしろ、コミュ障で喋るの下手だし
運動も苦手だし、成績だって中の下。
手先は不器用だし、おっちょこちょいだし、忘れ物も多い。
皆よりダメなところ、たくさんあるのにな……
名前はいつも、そう感じでいた。
そしてこれまでの経験から、このように集まってしまう視線への対応も心得ていた。
″無″になればいいのだ、と。
何も考えず、ただ一点を見つめること。
今は目の前の机の木目を見つめることにした。
彼女の思惑通り、そのうち担任の先生がやってきて、皆の注目はそちらに向けられ、クラスメイトの名前への関心はひとまず薄れていった。
「それじゃ、ひとりずつ前に出て自己紹介な」
ひと通りの事務連絡の後、ニコニコと楽しそうな担任の一言で全員の自己紹介が始まった。
簡単に済ませる者、ウケを狙って面白おかしく話す者、緊張から言葉に詰まる者
多種多様な自己紹介が着々と進み、いよいよ名前の番。
教卓の前に立つと、表情は自然とこわばった。
「苗字 名前です」
声を出した瞬間、教室内がざわついた。
「可愛い声!」「名前ちゃんて言うのか」「名前もかわいっ」
クラスメイトの半数以上いる男子全員が、ギラギラした目で自分を見てくる。
集まる視線に、名前は平常心でいられなくなってしまった。
嫌だな、男の子。好きじゃない。
早く席に戻りたい。
でももう少し、何か言わなきゃ。
自己紹介…自己紹介……
と、焦っていたが、ふと、ひとりの人物が目に留まった。
その人物だけは全くこちらを見ず、頬杖をついて、眠たげに窓の外をボーッと眺めているだけ。
全員ではなかった。彼だけは違った。
全く自分を見ない。
自分に少しも興味がない。
名前は拍子抜けするのと同時に、なぜかホッとして平常心を取り戻した。
「えっと……ピアノを弾くのが好きです。よろしくお願いします」
それだけ言うとぺこりと頭を下げ、席へと戻った。
それから名前の視線は、その生徒に釘付けになった。
ちょうど彼は名前よりも前方の席で、後ろから眺められる位置に座っている。
他の誰の自己紹介も聞いている様子はなく、あくびをしたり、ポリポリと頭をかいたりしながら、大半はボーッと窓の外を眺めていた。
そしていざ自分の番がやってくると、なんとも気だるそうに教卓へ向かった。
「国見英です」
名前を言って教卓を離れると、担任が慌てて声をかける。
「おいおい、他に何かないのか?」
「えーっと…じゃあ、バレー部です。よろしく」
無愛想にそう言って、スッと席に戻る。
名前はその様子を目で追っていた。
国見君、ていうんだ。
……なんだか気になる、国見君。
覇気のない感じで、スポーツ選手っぽくはない。
でも、バレー部なんだ。すごいなぁ。
見てるとなぜか少し心が落ち着く、国見君。
私を全く見てこない、初めてのひと。
