岩泉一にフラれた女の子【完結】
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episode.11「二度目」
「で?どうだった?やっぱり告白だった!?」
去っていった岩泉と入れ替わるように、興奮した加奈子が名前の隣に戻ってきた。
「まさか、付き合うの!?キャー!そしたらダブルデートとかさ」
「フラれた」
「……はぁ?今なんて…」
「私、フラれた」
思いもよらない展開に加奈子の目は点になる。
名前は遠くの一点を見つめたまま。潤んでいる瞳からはポロポロと大粒の涙がこぼれていた。
「どうゆうこと?ていうか、何で泣いてんの!?」
「うぅ〜……涙、止まんない」
「とりあえず説明して。意味わかんないから!」
ことの成り行きを加奈子に説明した。
実は岩泉に片想いしていたこと。
岩泉が、名前の好きな人について勘違いしていたので、つい本当のことを言ってしまったこと。
そして、フラれたこと。
バレー部の体育館へ行って岩泉を殴る、と荒れる加奈子を必死で止めているうちに涙は止まり、サッカーの試合を観る気分ではなくなった名前は、ひとり学校を後にした。
フラれた。
実らない恋とはわかっているつもりだったけど、実際にこうなると予想以上に辛い。
思わず苦笑が漏れた。
——あっちいけ!ブス!
——今はバレーのことしか考えられないっつーか……
これで二度目だな。はーちゃんにフラれるのは。
そうだよ。落ち込むことなんてない。
11年前にあれだけ大泣きしたけど、結局いい思い出になった。
今回も、きっとそう。
嫌われたわけじゃない。
片思いを終わらせるつもりもない。
クラスメイトで、同じ図書委員という関係が変わるわけじゃない。
明日からもこれまで通りに過ごしていれば、これもそのうちいい思い出になる。
同じ教室で毎日会って、挨拶を交わしたり、時々話をしたり。
うん、それだけで十分だ。
ーーーーーーーーーー
「岩ちゃんお帰り〜」
「おう」
バレー部はちょうど休憩中で、及川は戻ってきた岩泉にスポーツドリンクを渡した。
「よぉ、お疲れさん」
「ランニング楽しかったか?」
松川と花巻も出迎えたが、岩泉は彼らに返事をすることもなく、体育館の隅に座り込み、タオルを頭からかけて周りから表情を隠した。
その様子に3人は顔を見合わせ、首をかしげる。
「………」
——あっちいけ!ブス!!
名前を泣かせたのはあの時以来、二度目だ。
でも、あの時以上に傷付けた。
最低だ。泣かせちまった……
そればかりが岩泉の胸に残っていた。
これまでの名前のことを思い出す。
話していると時折り恥ずかしそうに頬を染めて、でもどこか嬉しそうで。
及川に向けられていたと思っていたそれらの表情は全て、自分に向けられたものだった。
そう思うと、ひどく胸が高揚する。
——私が好きなのは、はーちゃんだよ
思い出すと顔が熱くなる。
いったい、いつから?
まさか、幼稚園の頃から?
いや、もう何年も会ってなかったし、それはない。
だとしたら、再会してから?
でも、なぜ……
どうして俺なんだ。
あいつは、俺のどこをそんな——
「岩ちゃーん!休憩終了!」
「っ…お、おう!」
及川の声に我に返り、立ち上がる。
しかし後半の練習中も岩泉は上の空で、ミスを連発した。
「岩泉ボケェー!もう帰れ!!」
夕暮れ時の体育館に溝口コーチの怒鳴り声が響いた。