岩泉一にフラれた女の子【連載中】
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それは、たった6歳のときの出来事。
「はーちゃん、だいすきだよ」
私の一世一代の告白は
「あっちいけ!ブス!!」
その一言によって撃沈した。
episode.01「11年前」
ことの始まりは、幼稚園に入園したころから。
「おい、このムシおまえにやるよ〜」
「ムシいや。やめてってば」
「こいつ、またないてる!なきむしおんな!」
人一倍内向的で泣き虫だった私は、男の子たちの標的となり、いつもからかわれてばかり。
「おまえら、あっちいけ!!ブンなぐるぞ!!」
「うお!はじめがおこったー!!」
「はーちゃん……」
いじめられていると、必ず彼が来てくれた。
「おまえもな、ないてばっかいないでたたかえ」
「だって…おとこのこってこわくて……」
「こわくなんかねぇよ。だから、もうなくな」
特別優しい言葉はなかったけど
「名前!おれについてこい!もっとはやくはしれ!」
”はーちゃん”こと岩泉
「さわってみろ。バッタだ。ほら、こわくねぇから」
「ほんとうだ。こわくないね」
私は彼のことが大好きだった。
ーーーーーーーーーー
「なぁかあちゃん。しょうがくせいになっても名前とおんなじクラスになるかな?」
「え?」
「あいつすぐなくから、いつもいじめられてんだよ」
「そっかぁ…心配ね」
「よわっちいからな!」
「先に言っておくね。はじめ」
「?」
「名前ちゃんはお家が隣町だから、はじめとは違う小学校に通うのよ」
「ええっ!?」
「寂しいけど、仕方ないの。でもきっと大丈夫。名前ちゃんにも新しいお友達ができるからね」
「………」
ーーーーーーーーーー
卒園式の日。
会えるのは今日が最後かもしれない。
そう思ったから
「はーちゃん、だいすきだよ」
決死の思いで、彼の手をギュッと握ってそう言った。
「!!」
「がっこうちがうけど、またいっしょにあそぼうね」
「だっ、だれがあそぶか!あっちいけ!ブス!!」
そして放たれた一言に、涙が一気に溢れる。
「………うぅっ……」
たくさん泣いた。
はーちゃんから言われた言葉に傷付いたのか。
それとも、彼とお別れすることが悲しかったのか。
たぶん、その両方。
泣き虫な私だったけど、ここまで大泣きしたのはこれが初めてだったと思う。
その後「なんであんなこと言ったの」と、お母さんに叱られて、だんだんと涙目になっていくはーちゃんを見て、私の涙は止まった。
「だって…だってよ……」
そうやって何やら言い訳をしているはーちゃんを、彼のお母さんが抱き締めた。
「よわいままじゃ、あいつまたいじめられるよ」
「名前ちゃんに強くなってほしかったのね。だから、わざと悪口言っちゃったんだ」
「……おれもう、まもってやれねーもん…」
2人のそんなやりとりは、私の耳までは届かなかった。
あんなにひどいことを言われたのに、泣きじゃくる姿を見たら嫌いになんてなれなくて
幼稚園ではーちゃんに助けてもらったことばかりが深く胸に残って
私の初恋は暖かい思い出となった。
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