その笑顔に導かれ/エース
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初めて会ったあの日——
「また会えるか?」
おれはなぜそう言ったのか、自分でもわからない。体が勝手に動いた感じだ。
気付いたら3日後に会う約束をしていた。
船に連れてきた途端、見るからに楽しそうにしていて、聞けばわざわざ海賊を見に来たと言うし、その話をしている時は目がキラキラしていた。
なのに
「海賊に比べたら、私の生活なんてつまらないものなのかも」
そう言ったあいつの表情が急に曇ったことが気になった。
何か事情があるにしても、どうにか救い出せないかと考えちまった。
だから、また会いてェ。
「どうした?エース」
ボーッと海を眺めてたら、デュースが声をかけてきた。
「面白いヤツだったなァ」
「さっきの…やけど女か?」
「そうだ。やけど女。そういや名前を聞き忘れたな」
「もう会わないだろ」
「ここを出るのは2ヶ月後だろ?会うかもしれねェ」
「だとしても、名は聞くな」
「あ?なんでだ」
「別れが辛くなる」
デュースのその言葉が妙に胸に残った。
3日後——
本当に会えた。
船の中を見せてやると、やっぱり楽しそうで
連れてきてよかったとおれも嬉しくなった。
船内を案内している間、何度も名前を聞こうとしたが、デュースの言葉が引っかかって聞かなかった。
結局、名前はわからないまま”やけど女”は帰っていった。
でも
「まだ、名前を聞いてねェ」
また、体が勝手に動いた。
別れの時のことなんて、おれは考えねェ。
だってよ、次に会えた時はちゃんと名前を呼びたいじゃねェか。
「ミドリ」
真っ直ぐにおれを見上げて名乗ったミドリの瞳が綺麗で見惚れた。
「よォ!ミドリ!」
それからというもの、3日に一度噴水広場にやってくる買い物帰りのミドリをそうやって出迎えると、嬉しそうに笑った。
その瞬間が、おれは好きだった。
笑顔を向けると笑顔が返ってくる。
ミドリと会える限られた時間は、忙しない毎日に癒しを与えてくれた。
そんな日々が突然終わる。
ミドリはおれの前に姿を見せなくなった。