月島蛍と転校生女子【完結】
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episode.07「僕も」
ある土曜日。
定期テストを二週間後に控え、日向、影山、山口、月島の4人は、部活後に山口の家で勉強会をすることになった。
日向と影山から、どうしても…と頼まれた山口は、ひとりで2人は無理だから…と半ば無理やり月島を巻き込んだ。
月島も「自分の勉強の合間に少しだけなら」と渋々了承した。
が、小一時間もしてくると、バレー以外に集中力のもたない日向は痺れを切らし始める。
「なぁなぁ、一旦休憩してコンビニ行こーぜ」
「そうだな。腹減った」
日向の提案に影山もペンを机に置いた。
「そんな余裕ないでしょ。王様ここまた同じ間違いしてるし」
「あ?」
「でもさ、息抜きも大事だろーって!な!山口!」
「まぁ、ジュースだけじゃちょっと物足りないしね」
「ほらな!」
「でも戻ったら夜までみっちりやるよ!」
「はい……」
「何か甘いものも買ってくるから、ツッキーは待っててよ」
「……いいけど」
呆れ顔の月島を山口の部屋に残し、3人はコンビニへと出かけていった。
ひとり勉強に集中していると、家の中にインターホンが鳴り響く。
家主である山口は出てしまっているし、今は家族もいない。
居留守を決め込むつもりだったが、山口の部屋の窓から下を見れば、玄関先を確認できることを思い出し、窓から外を覗いてみた。もしも宅急便なら受け取っておいたほうがいいと思ったからだ。
「………あ…」
門の前にはポツンと佇む名前の姿。
インターホンを押したのは彼女だった。
一階へ降り、ガチャリと玄関を開けると門の向こうで彼女が驚いた顔をした。
「あれ!月島くん!?」
月島は玄関から出ると外門を開け、名前を門の中へ入れた。
「山口ならコンビニ行ったよ」
「そっか。タイミング悪かったね」
「すぐ戻ると思うけど」
「借りてた漫画を返しに来たの。これ、忠に渡しておいてくれる?」
「うん」
漫画の入った紙袋を受け取ると「ありがとう」とにっこりとした笑顔を返される。
休みの日に会えるなんて、気乗りしない勉強会も引き受けてみるものだ、と思った。
「じゃ、忠によろしくね」
「……苗字さん」
門に手をかけ、帰ろうとする名前をつい引き留めた。
「ん?」
「牧田と付き合ってるの?」
なんとなく、確かめるなら今だ、と思った。
考えるより先に、口が動いた感じだ。
「……えっ!なんで…」
「先週、告白されてたの知ってる」
「あ、そうだったの?うわ、恥ずかしいな……」
名前は赤くなった頬を手で押さえながら視線を泳がせた。
この反応はまさか…と月島は不安に駆られたが、名前はきちんと月島と向き合い、首を振った。
「付き合ってないよ。お断りした」
「………」
息が漏れた。
あぁ、よかった…と、心の底からホッとした。
と、同時にまた違った不安が込み上げてくる。
あんな完璧なヤツからの告白を断ったなら、僕なんて……と。
「何で断ったの?あいつ、格好良いし悪いヤツじゃないでしょ」
そう言うと名前はふふっと笑った。
「月島君の方が格好良いよ」
「……は?」
「一番好きだもん」
「っ………」
また、いつものあの笑顔で真っ直ぐに見上げてくる。
あまりにも自然に、何てないことのように言ってくるから、聞き間違いかと思ってしまう。
”好き”
その二文字に、どうしようもなく鼓動が速くなる。
今までにないほどに、心を掻き乱される。
思わず手を伸ばした。
「僕も———」
「あれ!!月島ぁ!外で何してんの!?」
日向の大声が響き、伸ばしかけた手を瞬時に引っ込めた。
帰ってくる3人の姿が目に入り、一気に顔が熱くなる。
急に恥ずかしくなって止まらない。
——僕も
考えなしに、何を言おうとしてたんだ。
こんな住宅街で、山口ん家で、真っ昼間から…
冷静さを欠いていた。
「あ、名前ちゃん。何かあった?」
名前の存在に気付いた山口は彼女に声をかけた。
「あの、漫画返しに来たら月島君いて。預かってもらったの」
「なんだ、そっか」
「あ、苗字 名前です。忠と月島君と同じクラスで」
名前は日向と影山に向かって頭を下げた。
この状況に、彼女にも少なからず動揺がうかがえる。
「家がそこなんだよね」
「そうなのか!俺、日向翔陽!こいつ影山!」
「チッス」
「うん、チッス!じゃ、お邪魔しました!」
会話もそこそこに、そそくさと帰っていく名前の後ろ姿を見送ると、不思議に思った山口は月島を見る。
月島は怒っているような、どこか困惑しているような、よくわからない表情をしていた。
「……ツッキー?何かあった?」
「ほんと、君たちすごいタイミングだよね」
ポカンとしている3人の顔を見て眉間に皺を寄せた。
「え?なになに?」
「何でもない!」
それからは、見るからに機嫌が悪い月島を余計に怒らせることしかできない日向と影山によって、山口の部屋は地獄絵図のような勉強会となった。
