最終章 〜私の戦士〜
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「……できないよ…」
ミドリの消え入りそうな呟きが
背中の奥から小さく聞こえた。
大丈夫だ。今夜、ちゃんと話を聞いてやる。
君の悩みは、おれが全て受け止める。
そう心の中で返事をして、歩みを進めた。
それから少しして——
「時間を取らせてしまってすみませんでした。」
「いえ、わざわざご足労いただきまして。」
ペルが応接間の前を通り過ぎた際に
部屋から執事と客人が出てくる場面に遭遇した。
客人の女性がすれ違いざまに会釈をしたので
ペルも軽く頭を下げる。
そのまま案内役の侍女に誘導され、去っていった。
見覚えのないその人物がふと気になり
彼女の背中を見送りながら、執事に声をかけた。
「彼女は?」
「ナノハナにある装飾店のオーナー様です。ビビ様のお召し物で世話になっていて。」
「へェ、ナノハナの。」
「ミドリを雇いたいとのことで、わざわざご挨拶に。」
「ミドリを?」
「どうやらミドリがナノハナへ買い付けに行くたびにその店を手伝っているそうで。彼女の腕とセンスを買っていただいているようでして。」
「本人は?」
「私からも説得するよう頼まれましたので、まだ決めかねているのではないかと。」
「……そういうことか。」
「私としては真面目に働いてくれているあの子がここを去るのは、いささか寂しいですけどね。」
執事は困ったように言いながらも嬉しそうに笑い
その場を去っていった。
ペルはミドリのここ最近の態度の理由がわかり
妙に納得した。
悩みの理由は……きっと自分だ。
——丁寧に編み込まれているな
——そういうの作るの好きなんです
——ビビ様のアクセサリーを買い付けているお店で、少しだけ手伝いをさせていただいたんです。それがとても楽しくて
彼女がアクセサリー作りが好きなことは
以前から知っていた。
例の店の話も聞いたことがあった。
夢中でその話をするときのミドリの表情は
とても生き生きと楽しそうで印象に残っている。
彼女にとっては夢のような誘いのはずだ。
でもそれを決めかねているというのなら
原因は自分にある。
私と離れることを
不安に思ってくれているんだろう。
私の存在が、彼女の可能性を邪魔している。
絶対に行くべきだ。ナノハナへ。
ここを離れて。
「……私の元を…」
ペルから小さく声にならない声が漏れた。