最終章 〜私の戦士〜
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
大変な仕事もなく、事件も起こらない。
宮殿に平穏な日々が続いていた。
昼間の侍女としての仕事を終えると
ペルに会いに行くこともあれば
ペルが忙しければ会えない日もあった。
周りの皆やビビにも
2人の関係は打ち明けていない。
「頃合いを見て話す」とペルは言っていたが
ミドリとしては、国の英雄の恋人が
自分だなんて不釣り合いだと感じていたので
できればこのまま隠していた方が…と思っていた。
今日はドレスとアクセサリーの買い付けのため
アイシャと共にナノハナへ来ている。
あれ以来、ミドリの仕事のひとつだ。
ナノハナにいる間は、数日間宿に泊まり
空き時間にはアクセサリー店の「ジャミール」で
手伝いをするのがミドリの日課になっていた。
「うん、作業も早いしとっても丁寧ね!ほんと助かっちゃう。」
何度も通っているうちに作業に慣れた
ミドリの腕をオーナーは買っていた。
褒められ、素直に喜ぶミドリの隣に
オーナーが座り、改まった表情を作る。
「前から考えてたんだけどさ、ここでちゃんと働いてみない?あんたを雇いたいのよ」
「えぇ!?」
思いもよらない申し出にミドリは言葉を失う。
「戦力になるし、作業中はいつも楽しそうだし。好きなんでしょ?ここでの仕事。」
「それは、そうですけど……」
「毎日毎日ここでアクセサリーを作るのよ。自分でデザインもしてみるといいわ。ミドリのデザイン、見てみたい。」
想像に胸が膨らんだ。
こんなオシャレな店で、素敵な商品に囲まれて
毎日アクセサリー作りに励んで、賃金ももらえる。
なんて魅力的なんだろう。
——これからはいいことしか起こらないよ
ペルさんの言った通り。
いいことばかりで
そのうちバチが当たるんじゃないだろうか…
「宮殿での立場もあるだろうけど、考えてみてちょうだい。いい返事、期待しているわね。」
オーナーはそう言い残し
ミドリの肩に軽く手を置いて去って行った。
その言葉にハッとする。
「宮殿……」
ここで働かせてもらうということは
ナノハナで暮らすということ……
アクセサリーに携わる仕事は、私の夢だった。
でも今、その夢を目の前にして頭に浮かぶのは
大好きな人の顔。