最終章 〜私の戦士〜
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最終章 〜私の戦士〜
——ミドリ、お前が好きだ
ビビ様の侍女という仕事をもらい
充実した毎日だけで十分だと思っていたのに
ずっと憧れていた人が私を想ってくれている。
まさか、あのペルさんが私を…
怖いくらいの幸せ。
天にも昇る気持ち。
絨毯屋での悪夢のような生活が
一生続いていくものなんだと思っていた。
私の人生はそういうものだんだ、と諦めていた。
それがまさか、こんな幸せが待っていたなんて。
「神様、ありがとうございます。」
部屋の窓から空に向かって小さく呟いた。
″幸せ″を感じるのは初めて。
だから初めて知った。
幸せを手に入れると
それを失う怖さが襲ってくること。
「幸せって怖いんですね。」
ペルの部屋の椅子に座り、出された紅茶の
カップを両手で包みながらミドリは呟いた。
「どうしたんだ?突然。」
その様子にペルは苦笑して、自分のカップを手に
小さなテーブルを挟んだ向かいの椅子へ座る。
「毎日幸せすぎて、今も時々夢じゃないかと思う時もあるし……それが壊れてしまうんじゃないかと思うととても怖いです。」
「壊れやしない。」
ペルは俯くミドリの顔を覗き込むように
笑顔を向ける。
「君はこれまで苦しみすぎた。だからもう、これからはいいことしか起こらないよ。」
その笑顔に安心したようにミドリの表情も綻んだ。
「何も心配はいらない。」
手を伸ばし、テーブルに置かれている
ミドリの手を優しく包むように握る。
瞬間、ミドリの体は硬直し、顔は真っ赤になった。
「……まずはその、すぐに照れるところをどうにかしないか。」
「すみません……」
「おれまで照れるだろう。」
ペルは照れ臭さから視線を流しながらも
するりと指先でミドリの手を撫でた。
「努力します……」
ミドリは手首を返し
ペルの掌と自分の掌を合わせ、ぎゅっと握った。
硬く、大きな手。
国のために戦ってきた男の人の手に
無性にドキドキする。
見上げるとペルはいつもの優しい顔で笑った。
本当に……幸せすぎて怖い。