第六章 〜私の希望〜
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数日後。
昼夜問わず兵士たちによる見回りが行われ
誘拐事件は収束しつつある。
コブラ王への用事を済ませたペルが宮殿内を
歩いていると、パタパタと忙しそうに動き回り
慌てている様子の侍女たち。
「どうする?」「探しに行く?」などの話し声が
聞こえてきて、ペルは耳を傾けた。
「そこまで遠くに行く用事じゃなかったわよね?」
「まだミドリをひとりで行かせるのは早かったかしら。」
ミドリの名前が出てきたことが気になり
ペルは彼女らに声をかけた。
「どうした?何かあったか。」
「ペル様。」
侍女たちは突然現れたペルに向かって頭を下げ
ひとりが代表して説明をした。
「ミドリが買い出しから戻っていなくて……随分と時間が経っていますし、彼女はひとりで街へ出たのが初めてなので少し心配で。これから探しに出ようかと。」
「私も手伝おう。」
「そんなっ、ペル様のお手を煩わせるわけには…」
「ちょうど巡回へ行こうとしていたところだ。」
静止する声を聞きもせず、正面玄関へ急いだ。
「あの、心強いです。ありがとうございます。」
侍女たちもペルの後へ続いた。
ーーーーーーーーーー
数人の侍女が歩き回ってミドリを探し
ペルは空から探していた。
人探しは得意なはずだか、見つからない。
——また誘拐だ
——若い女性ばかり、ここ一週間で3件だ
チャカの言葉を思い出し
気持ちは焦っていくばかりだ。
そして、嫌でも思い出してしまう。
——ミドリならもう、うちにはいないよ
彼女が自分の前から消えた日のことを。
「……クソッ…」
冷静になれ。焦ると勘が鈍るし視野も狭くなる。
見つかるものも、見つからなくなってしまう。
大丈夫。彼女は無事だ。絶対に。
ふとあの絨毯屋の屋根が視界に入る。
ミドリが暮らしていた場所だ。
何か手掛かりがないか、と店の前に降り立った。
が、正面のシャッターは閉まり
どう見ても営業しているようには見えず
薄暗い空気感に歩みを止めた。
「あら、こんにちは。」
前に話を聞かせてもらった隣の衣料品店の
おばさんに声をかけられる。
店の前を掃除していたようで
手には箒が握られていた。
「すまない。この絨毯屋は…」
「もうずいぶん前に閉じたみたいよ。」
「……そうだったのか。ここに住んでいた彼らは?」
「アルバーナから出ていったわ。」
思いもよらなかった事実にペルは言葉を失う。
「あの子がいなくなってから、お店もどんどん荒れていくし、お客さんも入らなくなって、経営がままならなくなったみたい。もともと全てあの子にやらせてたようだから。」
ミドリを店に売ったことで
まとまった金を手にしたはずだが
それすらもすぐに底をついたのだろう。
店も家も手放し、アルバーナにいられなくなり
どんな生活になったのか、おおよそ見当はつく。
これに懲りて
彼らも真っ当な人間になるといいんだが…
そんなことより、今はミドリだ。
結局手掛かりなど掴めなかった。
ペルは再び空へ舞い上がった。