第六章 〜私の希望〜
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チャカに言われたとおり、ペルは翌日の
早朝からアルバーナの空を飛び回った。
時折り降りたっては、上空からは見えにくい
狭い裏路地などを歩いて回る。
それを繰り返しているうちに
朝食を食べ損ねていることに気が付き
一度宮殿へと戻った時だった。
「あ、ペルだわ!」
通路の先の階段から、王女のビビが自分を見つけ
駆け下りてくる。
その隣にはビビに寄り添って歩くミドリの姿。
会うのはあの時以来だ。
「おはようございます。」
「あァ。おはよう。」
少し気まずそうにしながらも
ミドリはペコリと頭を下げた。
ペルの顔を見ることができない。
あの恥ずかしい告白から
たった2日しか経っていないから。
いや、何日経とうが
この恥ずかしさは消えそうにない。
顔が熱い。
”好き”と言葉にしたことで、改めて本人を
前にすると、今まで以上に魅力的に見える。
あぁ、私はこの人が好きなんだ…と
気持ちが込み上げてくる。
「先に部屋に行ってるわね。久しぶりなんでしょ?」
「えっ……」
もちろんビビは2人の間に
”そういうこと”があったとは知らないが
気を利かせ、ミドリを残して廊下を進んだ。
「………」
「………」
少し気まずい沈黙をどうにかしようと
ペルは何か言おうとする。
「えっと……」
「あの、この間はすみませんでした。変なこと言っちゃって……」
ほぼ同時に、ミドリは深く頭を下げた。
「あ、いや、いいんだ。」
「……別に何かを望んでいるわけではないので……えっと、今まで通りでお願いします。」
一昨日のことを思い出しているのか
顔を上げたミドリは耳まで真っ赤になっていた。
「あ、あァ。」
「失礼します。」
もう一度軽く頭を下げて、早足でその場を離れる。
パタパタと手で顔を仰ぎ、熱を冷ましながら
長い廊下の先でビビと合流する。
「あら、もういいの?」
「はい。」
「じゃあミドリ、今日もネックレス選んでね。」
「はい、喜んで!」
ペルには2人の会話までは聞こえてこないが
楽しそうな雰囲気が伝わってきた。
角を曲がり2人の姿が見えなくなると
不意に手で口元をおさえた。
やはり、どうしたって緩んでしまうから。
困った子だ。
”今まで通り”なんて…できるわけないのは
わかりきっていることなのに。
先ほどの真っ赤になった表情を思い出して
愛おしさが込み上げる。
自分も同じ気持ちだと言ったら
彼女はどんな反応をするだろうか。