第六章 〜私の希望〜
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第六章 〜私の希望〜
ジリジリと熱い日差しが砂漠を焼き付ける。
昨夜降った雨が蒸発して、この日は朝から
蒸し返すような暑さを感じた。
ペルはひと通りの公務を終え
兵士の訓練に顔を出そうと中庭へ向かった。
これまで気に留めていなかった”中庭”という場所が
今日はなんだか意識して止まらない。
自分が飛行訓練をしていた時
ミドリがいつも下から眺めていた。
その光景を思い出してしまうから。
もしかしてあの時から、彼女はおれのことを……
そう考えてしまう自分が恥ずかしい。
——私、ペルさんが好きです
昨夜はなかなか寝付けなかった。
——ご迷惑おかけします!
なんとも彼女らしい告白に頬が緩む。
出会った頃は、いつも下を向いていて
ほとんど視線は交わらない。
自分のことはあまり話さず
いつも私の話に静かに相槌を打っていた。
ここに来てから確実に明るくはなったが
まさかあんなふうに気持ちを伝えてくるほどにまで変わってきていたとは。
顔を真っ赤にして、声は震えていたが
真っ直ぐに私の目を見ていた。
もう少しで抱き締めてしまうところだった。
思い出すだけで、年甲斐もなく顔に熱が集まり
鼓動が速くなるのを止められない。
彼女の気持ちは、正直すごく嬉しい。
彼女は完全に自分の片思いだと
思い込んでいるようだが……
「——おい!」
「!!」
突然チャカに呼ばれ、ペルは驚いた。
というのも、気付けばすでに中庭に到着していて
目の前では兵士たちの怒号が響いており
隣にいるチャカは何度か彼に声をかけたが
もの思いにふけっていたペルがなかなか
気付かなかったので、少し声を荒げたのだ。
「何をボーッとしていた。」
「……私だって考え事ぐらいする。」
罰が悪そうに視線を逸らす。
——惚れてるんじゃないだろうな
以前この男から言われた通りになってしまい
ペルはなぜか少しだけ悔しい気持ちになる。
「聞いたか?また誘拐だ。」
何とも言えない表情を浮かべているペルをよそに
チャカは本題へ入ったので
ペルの顔付きは真剣なものに変わった。
「またか。これで何件目だ。」
「若い女性ばかり、ここ一週間で3件だ。今度は二十歳の女性。砂商談のヤツらだろうが、なかなか尻尾を掴ませない。」
「見回りは増やしているんだろうな?」
「当たり前だ。」
と、不意にチャカが横目でペルを見た。
「何だ?」
「お前こそ、絨毯屋通いがなくなってから巡回もサボってるだろう」
図星を突かれ、ペルは罰が悪そうに視線を逸らす。
「……まぁ回数は減ってしまったかもしれないが。」
「少し警戒を強めるぞ。お前が空を飛んでいるだけで、ヤツらも動きにくくなるんだ。」
「あァ、承知した。」