第五章 〜私の変化〜
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アルバーナへ帰ってきたミドリは
興奮冷めやらぬまま、ペルの部屋を訪れた。
前に一度来たときに「いつでも来るといい」と
言ってもらえたから。
そして何より、ペルに会いたかった。
「そうか。ナノハナへ行っていたのか。」
「とっても素敵なところでした!街全体もそうですけど、どこのお店も全て素敵で。目移りしちゃうくらい!」
いつになく楽しそうなミドリに
ペルも嬉しくなって笑った。
「ビビ様のアクセサリーを買い付けているお店で、少しだけ手伝いをさせていただいたんです。それがとても楽しくて。」
「そういえば、そういう物を作るのが好きだと言っていたな。」
ペルはベッド横の棚を横目で見た。
そこにはあの日ミドリから買ったミサンガが
小袋に入ったまま置いてある。
「……きっかけは、手首が細くて……」
ミドリは自分の手首を反対の手でギュッと握った。
「手首?」
「痩せこけてたからみすぼらしくて、何かブレスレットでも着けたら変わるかな?と思ったんです。」
「……そうだったのか。」
「でもブレスレットを買うお金なんてなかったから、家にあった麻紐で作り始めたんですけど…やっぱりそれも私の細腕には似合わなくて。でも作るのは楽しかったので、たくさん作ってました。」
あまりにも酷かったあの頃の生活。
そんなに月日は経っていないが
それはだんだんと思い出に変わりつつある。
笑って話せるくらいにまで
ミドリの心の痛みも癒えてきていた。
「ビビ様のお洋服やアクセサリーを選ぶのも、とても楽しくて、私、ここに来てから毎日が充実しています。」
ミドリの瞳が潤み始める。
心の痛みが癒えてきたのも
毎日の楽しい生活も
「全部、ペルさんのおかげです。」
気持ちが昂ぶり、涙となって溢れる。
自分でも思いもよらない涙に驚いて
ミドリは指先でそれを拭った。
その様子を見て、ペルは優しく微笑んでいた。
「私は何もしていない。君が変わったんだ。」
あの頃、その優しい笑顔にいつも救われていた。
その笑顔に惹かれて
強さに憧れて
優しさに癒された。
「私……」
「……どうした?」
「私、ペルさんが好きです。」
「………えっ……」
自分でも思う。
私は変わった。
前のままの私なら、ただ下を向いたままで
気持ちを伝えるなんて絶対にできなかった。
ペルさんが変えてくれたんだ。
「片思いなのも、身の程知らずなのも、ちゃんとわかってます。こんな気持ち、迷惑なのも承知しています。」
「あ、いや……」
「あの…でも……ご迷惑おかけします!」
勢いのままに言いたいことだけ言って
思いっきり頭を下げた。
急に恥ずかしくなって、返事も聞かず
そのまま背を向け、逃げるように部屋を出た。
毎日が生きている心地のしない人生だった。
そんな私が人を好きになることができて
その気持ちを相手に伝えることまでできた。
全て、ペルさんのおかげ。
恥ずかしい。すごく。
でもそれ以上に嬉しい。
振り向いてくれなくていい。
一生叶わない恋でいい。
ずっとずっと、あの人を好きでいられたら
それだけで、私の人生は輝き続けるから。