第五章 〜私の変化〜
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それから数日が過ぎ、ミドリの希望が叶った。
ちょうどアクセサリーの買い付けに行くと言う
王女の衣装を主に担当している、先輩侍女の
アイシャとともに、ナノハナを訪れた。
目の前に広がる、初めての海。
大きな商船で賑わう港。
活気ある人々。
町中に香る香水の甘い香り。
全てが魅力的な場所だ。
ラクダの引く荷車に丸一日乗っていたせいで
おしりがビリビリと痛かったが
その痛みを忘れるほどに、興奮していた。
「いつも寄る店を紹介していくわね。その後は好きに見て回るといいわ。私も自由にするし。今夜は宿を取ってあるから、夕食までにはそこに戻ってね。」
「はい!」
最初に行った店は、ビビ王女御用達と有名で
街の中で一番大きく目立った店だった。
広い店内には一点一点贅沢に高価なドレスが並び
それらを目当てに来ている客層もまた
見るからに高貴な女性たちだ。
オーナーと挨拶を交わし
新作だと言うドレスを何点か見せてもらう。
慣れているアイシャは、その中から
次々と選び抜いていく。
色も形もまちまちだが
どれもビビによく似合いそうなものばかりだ。
次に寄ったのはドレスの仕立て屋。
アイシャによると、最初の店は主にビビの
普段の公務用のドレスを買い付けているようで
式典などの特別な日には、その度に仕立て屋に
お願いしているということだった。
ミドリが一番興味を抱いたのは
「ジャミール」という看板を掲げた
アクセサリーの店だった。
1階の店舗では所狭しと数々の商品が並び
その全てが2階の工房で作られているという。
ひと通り馴染みの店を回り、アイシャと別れた後
ミドリはまたひとり「ジャミール」を訪れた。
ひとつひとつ綺麗にデザインされた装飾品は
何時間でも見ていられた。
そして、工房に山のように置かれている
アクセサリーパーツにも目が輝いた。
チェーンひとつ取っても何十種類とある。
ゴールドやシルバーに輝く金属類から
カラフルなビーズ、天然石、貝殻まで
これだけそろっていれば、どんなアクセサリーでも
無限に作り出せそうだ。
現に、作業をしている人たちは皆
忙しそうにしながらも、生き生きと楽しそうに
手先を動かしていた。
「あら、さっきの。ミドリさんだったかしら」
現れたのは工房を仕切っているオーナーの女性。
先ほど訪れた際にアイシャから紹介されていた。
「そうです。すみません、興味深くて、またお邪魔しています。」
頭を下げると「いつでもどうぞ」と
笑顔で快く受け入れてくれた。
「アクセサリー作り、興味あるの?よかったら少し手伝っていただける?無理にとは言わないけど」
「えっ、いいんですか?」
「ええ。ここはいつも手が足りなくて」
作業場の一角を借りて簡単な仕事を任された。
完成したペンダントトップに
指定されたチェーンを通すだけという単純な作業。
それだけでも楽しいひとときだった。
「このトップもひとつひとつここの皆がデザインして作ったものなのよ」
「どれも素敵です」
宝石が贅沢に使われたもの
大きな天然石が目を惹くもの
シルバーだけのシンプルなもの
見ているだけでワクワクしてくる。
きっと身に付けたら、心が躍って
その日一日、最高の気分で過ごせそうだ。
私もいつか自分の手でこういうものを作りたい。
強くそう思った。