第五章 〜私の変化〜
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「こっちはどう?」
「うーん…ちょっと目立ちすぎじゃない?」
「ドレスを変えますか?」
「えっ、この新しいドレス着るの、ちょっと楽しみだったんだけどな」
隣国との会食を控え、侍女たちとビビは
アクセサリー選びに頭を抱えていた。
「ミドリ、どう思う?」
ミドリは選ばれなかったドレスの片付けを
していたが、急にビビ本人から声がかかり
驚いて手を止める。
「え、私の意見など……」
「いいからいいから。聞かせて?」
恐縮しながらも、ビビの近くへと寄った。
そして真剣な表情で正面からドレス姿の王女を眺め
口に手を当てて少し考える。
ミドリにとって、このような場面で
意見を言うのはとても勇気が必要だ。
今までの人生で、意見など求められたことなど
一度もなかったから。
でもビビが自分に聞いてくれたことが嬉しくて
ミドリは勇気を出して思ったことを素直に伝えた。
「あの……このドレス、胸元の刺繍がとても綺麗なので、ネックレスはなくてもいいかと……」
「えっ、あえて?」
「へー、なるほどね」
思い切った意見ではあったが、周りの反応は
好感触で、ミドリは安心した。
そしてテーブルの上に並べられたアクセサリー類に目をやり、イヤリングを手に取る。
「その分イヤリングを少し目の引くものに……こちらなどはいかがですか?」
ビビの後ろに立ち
両耳の下に選んだイヤリングをあてがって
鏡越しにビビの様子を伺った。
長めに伸びたタッセルの先に大きめのパールが揺れる、胸の刺繍に合わせて選んだものだ。
「わぁ〜!すごくいい!」
「ほんと!よくお似合いです!!」
「これでいきましょう!」
ビビ本人も喜び、隣にいたメイディも
嬉しそうに声を上げ、周りにいた侍女たちも
手を叩いた。
そんな中でミドリはなぜか泣きそうになるのを
堪えていた。
自分の意見が受け入れられた。
王女様が喜んでくれた。役に立つことができた。
それがとても嬉しかった。
「ありがとう、ミドリ!」
満面の笑みでそう言ってくれるビビにただ頷く。
胸がいっぱいで、頷くだけで精一杯だった。
支度を終えたビビを送り出し
メイディとともに部屋に残ったミドリは
片付けに取り掛かった。
テーブルに並んだアクセサリーを
ひとつひとつ眺めながら大事に箱にしまう。
「定期的にナノハナのお店から買い付けてきているのよ。」
ネックレスやイヤリング、ブレスレットや指輪など
嬉しそうに眺めているミドリに
メイディが話し始めた。
「あそこはお店も大きくて、次々と新しいアクセサリーやドレスが作られてる。」
「ナノハナ……」
「国の玄関口だし、海の向こうからも珍しい品が入ってきたりするのよ」
「じゃあ……ナノハナに行けば、もっとたくさんの種類を見られるんですか?」
「もちろん。今度商品を見に行くときに連れていってもらえばいいわ。」
「はい!」
話を聞いただけで胸が躍った。
見たことのないほどたくさんの
装飾品やドレスが揃っているなんて。
行ってみたい。
この目で見たい。
こんなにも
何かを”したい”と思ったことは初めてだった。
——君も、いつか飛べる
いつかペルさんに言われた言葉が胸に響いた。