第一章 〜私の存在〜
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「いらっしゃいませ。」
「こんにちは!」
彼女を見て驚いた。
なんて可愛らしい人なんだろう、と。
彼女もミドリと同じように
頭に被っているストールが髪を隠しているため
全貌はよく見えないが、それでも
間から覗かせる綺麗な顔立ちが確認できた。
青みがかったパッチリと大きな瞳を輝かせて
店の商品である絨毯を眺めている姿は
女性であっても見惚れてしまうほど美しい。
自分とはあまりにも違いすぎる美人を前に
ミドリは無意識にストールを直し
自分の顔のほとんどを隠した。
「全て職人たちの手作りの品なんですよ。」
「手作り!?すごい!!」
驚きの表情を向けられ、目と目が合う。
恥ずかしくなるほど輝く表情を直視できず
慌てて目を逸らした。
が、彼女の方はミドリの顔を
さらに覗き込みながら肩に手を添える。
「あなた、大丈夫?ひどく疲れてるみたい。」
「…えっ……」
「ビビ様!!」
ミドリが返答に困っているその時
離れた場所から男性の声が聞こえた。
途端に彼女は小さく縮こまり
絨毯が並べられたテーブルの横へ身を隠すと
口元に人差し指を立て、ミドリに向かって
「シー」のポーズをした。
それを見てミドリはとりあえず、コクリと頷く。
が、その行動はすでに手遅れだった。
「隠れても無駄です。」
店の軒下から声をかけられ
2人は同時にギクッと跳ねる。
「出てきてください。ビビ様。」
「もう!」
観念した彼女は仕方なく立ち上がった。
「宮殿を出る時は声をかけてください。もうじき公務の時間です。」
”ビビ様” ”宮殿”
その言葉でピンときた。
どこか見覚えのある女性だと思っていたら
彼女はこの国の王女様だ!
この時初めてそのことに気が付き
驚きと同時に心の底から納得した。
彼女から放たれるオーラは
明らかに常人とは違ったから。
王女様をこんなにも間近で見たのは初めてだ。
それに会話も交わしてしまった。
自分に起こっている今の非現実的な出来事に
ドキドキと胸が高鳴った。
それに……
——あなた、大丈夫?ひどく疲れているみたい。
一国の王女が
私なんかの心配をしてくれるなんて……