第五章 〜私の変化〜
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第五章 〜私の変化〜
仕事の合間、空き時間ができたので
中庭へと足を運ぶ。
すっかり日課になってしまった。
だがミドリはこの日も、ペルの飛行訓練を
見ることはできなかった。
最近はタイミングが合わないのか
こういうことが続き
なかなかペル本人と会うことができずにいる。
「やァ。」
「ライアンさん。こんにちは。」
「ペルさんならいないぞ。」
ひとりトレーニングでもしていたのか
ライアンは汗を拭きながらこちらにやってきて
ベンチの荷物から水を取り出し口へ含んだ。
ペルを目当てに来ていることを
彼には見抜かれていた。
「そうみたいですね。」
少し恥ずかしく思いながらも
隠しても仕方がないので素直に残念がる。
「最近ここでは訓練していないんだ。どうやら飛ぶ場所を変えたらしい。」
「え?どちらに?」
「さぁ。おれにもわからない。」
ドスッとベンチに腰掛けながら
ライアンは苦笑を漏らす。
「おれたちが邪魔だったかな。」
「………」
「飛行訓練に集中できなかったのかもしれない。」
「そうですね……」
ミドリは中庭の空を見上げる。
翼を大きく広げ、空を切るペルの姿を浮かべた。
ここへ訓練を見に来ることを
「好きにしたらいい」と言ってくれたけど
本当は迷惑だったのかも。
ペルさんは優しいから。
ライアンさんの言うとおり、私たちがいたら
集中できなかったんだ。
「………」
「今度ペルさんに場所を聞いておこうか?」
「いえ、もう邪魔はしたくないので。私、失礼しますね。」
「おう。またな。」
ライアンに頭を下げてその場を離れた。
気分はものすごく落ち込んでいた。
つい最近自覚した、ペルへの気持ち。
虐げられて生きてきた自分が
まさか誰かのことを好きになれるなんて、と
嬉しくて気持ちが舞い上がった。
だが、すぐに思い知らされたペルとの”距離”
自分から会いに行かなければ会えない人なのに
それすらも叶わなくなってしまった。
歳の差。立場の違い。
護衛隊副官であり王国最強の戦士。
ペルはミドリにとって”手の届かない人”
この恋は許されないのかもしれない。