第四章 〜私の初恋〜
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それ以来、ミドリは非番の日や空き時間に
中庭へ行くのが習慣となっていた。
そこではほとんど毎日、午後に兵士たちの訓練が
行われていることが多かった。
ここへ来ればペルさんに会える。
そんな下心から始まったことだったが
国のためと汗を流しながら辛い訓練に勤しむ
兵士たちの姿に感銘を受け
気が付けば飲み物やフルーツなどの
差し入れもするようになっていた。
仕事を終えた夕暮れ時。
もう訓練は終わっているであろう時間に中庭へ急ぐと
ひとり残ったペルが空を飛び回っていた。
ペルの飛行訓練に間に合ったことに嬉しくなり
空を見上げながら笑顔になる。
「やァ。お疲れ様。」
声をかけられた方を見ると
ライアンがいつものベンチに座っていた。
「こんにちは。もう訓練は終わってしまったんですね。」
「あァ。おれは少しペル様を見させてもらおうと思って。」
ミドリはライアンの隣に腰掛け
同じように上を見上げ、上空を飛び回るペルを目で追った。
「本当かっこいいよなァ。」
「はい。あんな風に自在に空を飛べたら気持ちいいでしょうね。」
「でもあの人は満足していない。狭い場所でも今以上に自由に飛び回る。もっと風を読んで、いかに早くトップスピードに到達できるか。そんなことばかり考えているそうだ。」
「すごい。」
「悪魔の実の能力者ってだけじゃないんだ。基本的な戦闘能力もものすごい。おれにはとても真似できないよ。すごく、憧れる。」
「……わかります。」
憧れ。
私も、同じ気持ちだった。
でも今の私のは、違う。
憧れだけじゃ説明できない、この気持ち。
こんな私が誰かのことをそんなふうに思うなんて
一生ないものだと思ってた。
でも今なら自分の気持ちに素直になれる。
私はペルさんに恋をしている。
・
・
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空を舞いながら
ペルからも下の2人が見えていた。
あの兵士は、ミドリが前も話していた相手だ。
よく笑っている。
本当に宮殿へ連れてきてよかった。
ここへは、彼と会うために
通っているのかもしれない。
「……場所を変えるか…」
ため息のような一言が漏れた。
中庭の上空を離れ、さらには宮殿をも離れ
みるみる加速する。
砂漠に落ちかけている夕陽は
あの日ミドリを背に乗せて飛んだ時と
同じ景色だった。
——ペル様
前までは『ペルさん』と呼んでいたミドリが
自分の呼び方を変えたことにはすぐ気付いた。
ここでの生活が身についた証だろう、と
嬉しくもあり、同時に少しの寂しさもあった。
そして、若い兵士と楽しそうに話をする彼女の姿。
「……っ…」
街を離れ、広がる砂漠へ向かって急降下をする。
腹部が触れそうなほどギリギリの低空飛行をし
翼を大きく振ると爆風によって砂が舞い上がる。
ペルが何か憂さを晴らしたい時にやる行動だった。
しかしそれを繰り返しても、モヤモヤと胸に広がる
気持ちは少しもスッキリしない。
おれは間違っている。
こんな気持ちになるなんて。
こんな……
独占欲なんて。