第四章 〜私の初恋〜
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ビビの侍女となったミドリの仕事は
王女の一日の予定を把握し
食事の手配や着替え、化粧など身の回りの世話
そして公務への付き添いなど。
先輩侍女であるメイディに教わりながら
仕事を覚えていった。
もともとアクセサリーに目がなく
時間を見つけては
自分でアクセサリー作りをしてきたミドリは
特に衣装や装飾品選びにいつも目を輝かせた。
小さな商店街の
小さな店の中が世界の全てだった彼女は
ここで過ごしているうちに
自分が世間知らずであることを思い知る。
王族に恥じぬよう、少しでも役に立てるように、と
できるだけ多くのことを学ぶため、時間があれば
宮殿内の図書館へ行き、新聞や書物を見漁った。
アラバスタの歴史。
ネフェルタリ家のこと。
外海の世界。
ペルの言った通り
世界はミドリの知らないことばかりだった。
仕事をして、勉強をして、毎日ヘトヘトになり
倒れるように眠りについた。
体は疲れていても、心はいつも満たされていた。
ここには暴力をふるってくる人もいない。
汚いものでも見るかのような
軽蔑した目つきをしてくる人もいない。
罵声を浴びせられることもない。
これまでの生活が一変
毎晩、日々の幸せを噛み締めながら眠りについた。
1ヶ月ほどが過ぎ
ここでの生活にも慣れてくる頃
少し寂しさも感じるようになっていた。
それは、同じ宮殿内にいるはずのペルと
会う機会がほとんどないということ。
——そばに置いておきたいんだ
そう言ってくれたから
てっきり頻繁に会えるものなのかと思っていたが
顔を合わせても廊下ですれ違うときに
軽く挨拶を交わす程度だった。
副官というのはミドリの想像以上に
忙しいらしかった。
ーーーーーーーーーー
「こちらのピアスはどうですか?今日のドレスにも髪型にもよく合ってると思います。」
「ありがとう。それにする!」
今日はビビが街での式典へと参列する。
そこへメイディとミドリも付き添うことに
なっていた。
準備を終え、会場へと向かう途中
こういう催しにはきっとペルも出席するだろう、と
恩人に久しぶりに会えるかもしれない機会に
ミドリは胸を膨らませていた。
しかし、式典が始まっても一向にペルは現れない。
「今日はペルさんはいらっしゃらないんですね…」
残念そうにぽつりとそう呟くと
隣にいたメイディが小さく声を荒らげた。
「こらっ、ペル『様』と呼びなさい!」
「あ、すみません…」
身を縮こませて反省するミドリに
メイディは耳打ちをする。
「コブラ様が動くときにはペル様やチャカ様も動くけど、今日はビビ様だけだし、小さな催しだから。こういうことはよくあるのよ。」
「そうなんですか…」
数時間にわたる式典を終え、宮殿へ戻ると
ビビの召し替えを手伝った。
「お疲れ様でした。お茶にされますか?」
「ううん、いらないわ。ミドリも慣れない場所で疲れたでしょ?もう休んで。」
「え、ですが…」
「今日はもう何もないし、私ものんびりするから。」
「わかりました。何かありましたらお呼びくださいね。」
「うん、ありがとう。」