第三章 〜私の未来〜
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堪えていたものが次々とあふれ出て
それを両手で何度も拭う。
ペルはただ、静かにその様子を見ていた。
「助けて……なんて、言いません。」
叱られた子どものように泣きじゃくりながら
ミドリは小さな声でゆっくりと話し始める。
「誰かにすがったら、期待してしまう。私…期待しないんです。待っていても、無駄なこと知ってるから……誰にも、何も期待しない。その方が楽なんです。」
「………」
「だから、ペルさんにも期待しません。期待したら……後が辛いから。」
ペルはその小さな肩に両手を置き
背を屈めて顔を近づけ、微笑む。
「大丈夫だ。必ず助ける。期待してくれ。」
先ほどとは別人のような静かで優しい声に
余計に涙を誘われる。
「今、このまま連れ出すこともできるが、人攫いのような真似はしたくない。明日、兵士たちを連れて、法のもとに必ず助け出す。」
「…っ……」
「もし、本当に私が迎えに来たら…もう誰にも期待しないなんて、そんな言葉は言わないでくれ。」
ミドリが手の甲でゴシゴシと強めに涙を拭うと
自分を真っ直ぐ見つめる真剣な瞳と視線が交わる。
「必ず、迎えに来る。」
「………」
待ってます。
必ず、来てください。
本心ではそう思ったけど、言葉にはできなかった。
これ以上、この人の負担になりたくない。
「……もう戻らないと。いないことがバレたら面倒なので。失礼します。」
頭を下げて、顔も見ずにその場を後にした。
最後まで素直にはなれなかった。
——きっと迎えにくるから
そう言った実の母ですら現れなかった。
大丈夫。見放されることには慣れてる。
ひどい扱いも慣れてる。
でも……
ちょっとだけ、期待して待っていてみよう。