第三章 〜私の未来〜
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「そのような娘はいません。他をあたってください。」
「この辺りはあらかた探したんだが、見つからないんだ。」
「すみませんが、お客様でないのならお引き取りください。」
店長が素っ気ない返事を返すと
ペルは諦めたように店を出ていった。
ミドリは居ても立っても居られず
見つからないよう音を立てずに裏口から外へ出て
表の通りへ急いだ。
すぐにその後ろ姿を見つけ、泣きそうになる。
見間違いではない。
本当に、本物の彼だったから。
「ペルさん!」
後ろから声をかけると、振り返ったペルは
最初少し驚き、すぐに安堵の表情を浮かべた。
「よかった。無事だったのか。」
「どうしてここへ?」
「絨毯屋にいた青年に、この辺りにいると聞いて探していたんだ。」
唇を噛んで、涙を堪えた。
自分を探してくれていたことが
涙が出るほどに嬉しかった。
「あの…とりあえず、こちらへ……」
人目を気にして、ビルとビルの間の
狭い路地へと入る。
「驚いた。突然いなくなっていて。探し出すのが遅くなってすまないな。」
「なっ…どうしてペルさんが謝るんですか!」
「もっと早くあの家から助け出していれば、と悔やんでいたんだ。」
「そんなこと……」
あなたは何も悪くないのに…
ペルの誠実さにミドリは再び涙を誘われる。
「まだ店には出ていないようだな。あそこがどんな場所かは……」
「はい、もう理解しています。散々ですよね、私の人生。あの家を出られたと思ったら、こんな場所へ……でも、もういいんです。」
ミドリは足元に視線を落としながら笑った。
いつも見せていた、諦めたような笑顔だ。
「体の傷が目立たなくなったので、明日からお店に出されるんです。お客さんにいいようにされる。でも別に平気。今までと同じで、私はただひたすらに耐えていくだけです。」
その笑顔、その言葉に
ペルは胸が締め付けられ、拳を強く握った。
「未来なんてない。私はもう、私の人生を諦めました。」
ミドリは顔を上げるとペルの正面に立ち
真っ直ぐにその瞳を見つめる。
「ペルさんにお礼を言えなかったことが心残りだったんです。たくさん励ましてくれて、ありがとうございました。あなたのおかげで、とても楽しかった。こうして、私なんかを探しに来てくれたことも……嬉しかったです。」
最後に深く頭を下げた。
「ありがとうございました。どうか、お元気で。」
黙って聞いていたペルの拳がふるふると震え
ミドリが恐る恐る顔を上げると
ペルの表情は怒りに満ち溢れている。
「なぜ……」
「……え?」
「君はなぜ”助けてくれ”と言わない!!!」
面と向かって叱りつけるように声を荒げると
ミドリの瞳からボロっと涙がこぼれた。