第三章 〜私の未来〜
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その翌日。
裏町のとある店にミドリの姿はあった。
3階建てほどの小さなビルが立ち並ぶその一角。
表向きは小さな病院やただの施術所のような外観。
中に入らなければ、違法な店とは到底わからない。
奥行きがあり、入ってすぐの受付を過ぎると
その奥の廊下にはずらりと扉が並んでいる。
扉ひとつひとつが小さな部屋に繋がっており
部屋には窓もなくベッドだけが置かれていた。
ミドリはそのうちの一部屋で
シーツを広げベッドメイキングを行っていた。
ここへ来てもうすぐ二週間。
痩せすぎというのと、体に傷や痣があることから
今はまだ接客はせず、裏方で働かされていた。
その表情は曇っている。
自分の人生、これ以上落ちることなんて
きっとないだろうと、耐え忍んできたけど……
あの日
家の前に伯父さんが手配した砂商談が現れた——
「売られるなんて嫌!!今まで以上にもっと働きますから!!お願いです!!」
「うるせェ!まとまった金が必要なんだ。せめて成人まで待ってやろうと思ったが、もういいだろ。」
「ええ、もちろんよ。口答えするんじゃないよ。どこへ行ったってあんたの人生なんて同じなんだから。」
「この辛気臭ェツラをもう見なくて済むと思うとせいせいするぜ!」
膝をつかされ、後ろ手に腕を縛られる私を
これまで共に暮らしてきた彼らは
嘲笑うように見下ろしていて
伯父さんの手には札束がしっかりと握られていた。
「えれェ額払ってんだ!抵抗するんじゃねェ!!」
「うっ…ううっ…」
砂商談の大男に繋がれた綱を強く引かれ
抵抗も虚しくラクダの引く荷台へ乗せられる。
これ以上ないほどに、恐ろしく惨めだった。
揺れる荷台の中で次々と涙が溢れた——
「はぁ……」
あれから毎日、枯れるほど涙を流した。
ここがどういうところなのかも理解したし
今後自分がやらされることも覚悟した。
そんな中で、ふとペルさんの顔が浮かぶ。
——今すぐここを出るべきだ
心から私を心配してくれていた彼を
もっと頼って良かったのかもしれない。
笑って彼と過ごしていた時間が恋しい。
もう会えないと思うと、無性に会いたくなる。
すでに諦めた自分の人生を思うよりも
ペルさんのことを考える方が、涙が溢れた。
今もまた、仕事をしながら涙を堪える。
部屋の掃除を終え、扉を開けたところで
入口の方から声が聞こえたので
少しだけ隙間を開けて戸を止める。
受付での接客中は顔を出さないようにと
言いつけられていた。
「人を探している。」
聞こえてきた声に体が反応した。
まさか……
「ミドリという娘だ。知らないか?」
はっ…と声を上げそうになり
ミドリは慌てて口元を手で抑える。
落ち着くよう息を吐き、戸の隙間から覗くと
店の受付にいたのは間違いなくペルだった。