第三章 〜私の未来〜
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それからまた一週間が過ぎた水曜日。
この日も巡回を終えたペルが絨毯屋へ足を運ぶが
やはりそこにミドリの姿はない。
が、代わりにカウンターに男が腰掛けていた。
ミドリの従兄弟のヘクドルだ。
つまらなそうに雑誌を広げ眺めていて
ペルの存在に気付きもしない。
ミドリの所在が気になったペルは
彼に話を聞こうと店の中へ入った。
「失礼する。」
「へーい。いらっしゃい。」
「聞きたいんだが、いつもここにいた少女は?」
そう声をかけると
ヘクドルは雑誌から目を離し顔を上げた。
「あ?少女ってミドリのことか?」
「あァ、そうだ。最近見ないな。」
「あ。あんた。見たことあると思ったら、前にあいつの変な腕輪買ってた客か。ミドリならもう、うちにはいないよ。」
「いない?」
何事もないことのようなヘクドルの発言に
ペルの方は目を見開き、一瞬言葉を失う。
「だからおれが店番するハメに…勘弁してくれよな。」
ヘクドルは不機嫌そうに眉間に皺を寄せながら
再び視線を雑誌へと戻した。
「いない、とはどういうことだ。」
「もともとうちの家族じゃないんだ。親父に売られたよ。」
「売られた!?」
ミドリのことなど全く興味もないように
落ち着いているヘクドルとは反対に
ペルは焦りからだんだんと声を荒げる。
「なせだ!一体誰に!?今、どこにいるんだ!」
「どこって言われてもな…もう一週間以上前だし……」
頬杖をつき、雑誌のページをめくりながら
そう言うヘクドルへ鋭い視線を向けて詰め寄る。
「っ……な、何だよっ!」
「こちらは真剣に話している。教えてくれ。どこへ売られた。」
その迫力にヘクドルはたじろぎ、雑誌を閉じた。
「砂商談の奴らが引き取って行ったよ。その後は知らないけど、どっかの店に売られるんじゃないか?」
「店?」
「裏町に若い女を買える店がいくつかある。きっとそのどこかだ。」
「なっ…法律で禁止されているだろう。」
「法律?ははっ。そんなのあの辺りじゃ関係ない。値段によっては何でもできる。興味あるなら行けば?あんた、いい身なりしてるし金あるんだろ。色々遊べるよ?」
「黙れ!!!」
ニヤニヤと不謹慎な言葉を並べるヘクドルを
一喝して、ペルは足早に店を出た。
悔しさと怒りで震えるほどに拳を握っていた。
仮だとしても15年、共に暮らした娘を簡単に
売りに出すなんて。
思った以上に劣悪な人間達だった。
同時に自分のことも責めた。
なぜもっと早くにあの家から連れ出さなかった。
こうなる前に、助け出す方法はあったはずだ。
彼女は今どこにいて
どんな思いで過ごしているのか。
考えるだけで胸がつまる。