第三章 〜私の未来〜
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第三章 〜私の未来〜
こんなことは初めてだった。
カウンターにいなければ
店のどこかで商品の整理をしていたり
客の相手をしていることもあるが
この日はどこにもミドリの姿はない。
人の気配のない、静まり返った店内。
シャッターが下りているわけではないので
店自体は営業中のようだ。
ペルは少しの間、店先で待ってみたが
一向に現れる気配はない。
住居へ続いているカウンターの奥へ
声をかけようかと迷ったが
ミドリ以外の家族が出てきてしまっては
面倒なことになりそうだったのでやめておいた。
「……帰るか…」
息を吐く程度の小さな独り言を漏らし
そっと店を離れた。
——ペルさん、今日もお疲れ様です
——あ、そろそろ来られるかと思ってました
——こんにちは。今日も暑いですね
いつも必ず出迎えてくれていた
これまでの彼女の姿を思い出す。
楽しみに待ってくれていたように感じていたが
それは自分の思い過ごしだったのかもしれない、と
ひとり恥ずかしくなる。
いつかのように買い出しに出ているのだろう、と
この時のペルはあまり深く考えず宮殿へと戻った。
一方、ペルが去った後の絨毯屋では
こんな言い合いがされていた。
「ちょっとヘクドル!ちゃんと店番しなさいよ!」
「あ?なんでおれが…」
「仕方ないでしょ!ミドリはもういないのよ!」
「くっそ。面倒くせェな……」