第二章 〜私の憧れ〜
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——私は間違っていると思う
勇敢で誠実なあの人からの言葉は胸に刺さる。
でも、じゃあどうしたらいいの。
私はあなたのように強くはないから
この生活から抜け出したくても、勇気が持てない。
どうせ私はダメな人間なんだ。
思い出すたびにそうやってくよくよ悩んで
余計に自分を嫌いになっていく。
でもペルさんは、そんな私を見捨てず
その後も何度も店に足を運んでくれた。
自分の仕事の話だとか、ビビ様の話だとか
宮殿のことだとか
いつも何気ない会話を数分だけして去っていく。
あれ以来、決して核心には触れてこない。
そんなところに、彼の優しさを感じた。
ある時、なぜここへ通ってくれるのかと聞いたら
この界隈の巡回だと言っていた。
「見回り中に話し込んでいていいんですか?」
「ダメだな。秘密にしておいてくれ。」
そう言って口元で人差し指を立てて笑うペルさんに
釣られて私も頬が緩んだ。
店番中、気がつけば彼が来てくれるのを
待っている自分がいる。
その何気ないひと時は
知らない世界を知る刺激的な部分もあれば
不思議と心が安らぐ時間でもあって
まるで新しい友人ができたかのようだった。
ーーーーーーーーーー
「ペル様だわ!!」
ある日
ミドリは珍しく買い出しを頼まれていた。
商店街の大通りを歩いているとき
響いた黄色い声に体が反応する。
聞き間違いかと思ったが、声がした方を見れば
確かにその中心にいるのはペル本人で
数人の女性や子どもたちに囲まれていた。
それを見たミドリの周りにいる人々も
彼の名を口々にする。
「本当だ。ペル様よ。」
「こんな近くで見られるなんて。」
ドクン、ドクン、と心臓が大きく脈打つ。
ミドリは皆が彼を知っていることに
とても驚いた。
王族の護衛兵とは聞いていたけど
まさかそんな、有名な人……?
「かっこいい!あれが王国最強の戦士!!」
隣にいた青年の声に身体が震える。
まさか、あのペルさんが……王国最強!?
そんな有名な方だったなんて……
もう一度、そちらの方を見る。
何度確認しても、それはやはり
いつもミドリの店へ来るペルその人で
でも今人に囲まれているのは
どう見ても自分とは別世界に住む国のヒーロー。
「!」
「!」
自分を見つめる視線に気付いたペルと
パチっと目と目が合う。
ミドリはどう反応したらいいのかわからず
咄嗟にその場を離れた。
「すまない、通してくれ。巡回中なんだ。悪いな。」
ペルは人混みを掻き分け、その後ろ姿を追った。