親友
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皆が寝静まった夜。
ウソップが不寝番の時間、見張り台へ登った。
ちゃんと話せるかもわからないけど
話がしたかった。
私の気持ちはまだまだ伝えられそうにない。
でもそれは、そっと心の奥に隠したままでいい。
うまくできなくても、緊張しても
話をして、今までの2人に戻りたかった。
見張り台では、ウソップが眠そうに
伸びをしながらあくびをもらしていた。
「ウソップ。」
「ミドリ。どうした?こんな時間に。」
「ちょっと夜風にあたりに。」
「おォ、そうか。」
2人きりになるのは久しぶりで緊張したけど
何ともないフリをして隣に座る。
「………」
話がしたくてここまで来たのに結局言葉が出ない。
「そういや今日の昼間ルフィとよォ」
そんな私の空気を察したのかどうかはわからない。
けど、いつもの調子でウソップが話し始めた。
「ゾロが寝てる隙にあいつのダンベルで遊んでたら、ルフィのヤツが勢いあまって海に落としちまって。」
「え!それでどうしたの?」
「フランキーに適当な廃材もらって、おれが似せて作った。」
「それ絶対バレるでしょ。」
「それがよ、その後ゾロがトレーニングに使ってたんだが『なんか今日は軽ィな』とか言ってるだけで全然気付かねェんだよ。」
「うそ!それゾロ寝ぼけてたんじゃない?」
「だからおれが『おめェの力が強くなったんだろ〜このこのォ』って褒め称えてたんだが、ルフィの野郎が『ゾロ全然気付かねェな〜ばかだな〜』とか言いやがって。」
「あはは!ルフィらしいね。」
「全くだぜ、あの野郎。まァ結局ブチ切れて斬りかかってきたゾロに追い回されて、逃げた先にいたサンジにゾロがぶつかってだな、2人が喧嘩になり、おれとルフィは無事逃げ切ったってわけだ。」
話し終えるとウソップは満足げに目を閉じて
うんうん、と頷いた。
やっぱり楽しい。
こうして2人でいるだけで、そう思える。
それにウソップが話してくれたおかげて
自然に笑えてた。
なんだ、普通にできるじゃん。
今までの私に戻れるじゃん。
ホッとして息を吐くと
少し真面目な顔つきになったウソップが
顔をのぞいてきた。
「で、何があったんだよ。」
「え?」
「何か悩んでるんだろ。眠れないほどなのかよ。」
胸が暖かくなった。
笑わせて、不安を取り除いて
話しやすくしてくれる。
意図せず、私を落ち着かせてくれる。
「……さすがだね…」
「あ?」
「ウソップは私のこと、よくわかってるなぁって。」
「いや全っ然わかんねェよ。」
いつものようにツッコミを入れてくるその顔も
私を安心させる。
思わず笑顔を返すと
ウソップはぼりぼりと頭をかいた。
「わかんねェから教えてくれよ。こうやっておれのとこに来てくれたんなら、少しくらい力になりてェじゃねェか。」
「……ありがとう。それだけで十分。」
そう言ったら、少しだけ不満そうな顔をした。
本当に十分すぎる。
私を恋愛対象にしてほしいわけではない。
今まで通り、私の一番そばで
”親友”でいてくれたら
今はまだ、それだけで本当に十分。
「ミドリ、上見てみろ。」
ふと上を見上げるウソップを真似て顔を上げた。
そこには、何一つ視界を遮るものはなく
一面の星空。
「キレイ…」
「な?すごいだろ?まァ、何悩んでるか知らねェけど、これ見てたら少しは紛れるんじゃねェか?」
「うん。そうだね。」
2人、肩を並べて
見張り台の隅に背を預け、同じ夜空を見上げる。
少しだけ欲が出た。
足元にだらりと置かれたウソップの手。
そこに、自分の手を重ねた。
「あ?なんだよ。何か怖ェか?」
その行動に驚くでも、照れるでもなく
心配してくれるところが彼らしい。
「……少しこうしてていい?」
「……おう、いいぞ。」
男らしく硬くて、熱い手だな、と思った。
こんなふうに触れたのは始めてで
心臓が壊れそう。
私の気持ちは知らなくていい。
でも、いつかこの男も
同じ気持ちになってくれますように。
親友の手をギュッと握って、星空に願った。
…fin