親友
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隣にいると心地よくて
気取らないし飾らない
そのままの自分でいられて
なぜか私の気持ちをわかってくれて
何時間でも飽きることなく楽しく話ができる。
ときには喧嘩もするけど、気付いたら仲直り。
サニー号には
いつも私たちの笑い声が響いていた。
同じ船に乗り合わせた仲間であること以上に
″男友達″ ″親友″
そんな言葉がしっくりくる。
恋愛にはならない2人。
だったはずなのに………
〜親友〜
「ちょっと!これ!どうしたらいいの!!」
少しでも気を抜けば海に落ちそうになる。
そんな状況でも絶対に離すもんかと
竿を握った手に力を込める。
竿の先は強くしなり、その先から水中へ続く糸は
今にも切れそうなほど張って
水面を右往左往していた。
力には自信のあるほうだったのに
指も手首も腕も、踏ん張っている両足も
すぐに限界が近づく。
なんで私がこんなことを……
つい5分ほど前のウソップを恨んだ。
「おうミドリ、ちょっとこれ持っててくれ。」
と、お前どうせ暇だろ〜みたいな軽いノリで
たまたま通りがかった私に釣竿を渡してきた。
その糸の先はすでに海に浸かっていて
魚がかかるのを待っている状態。
ウソップはもう一つの釣竿を手に
甲板の反対側へと行ってしまった。
二箇所で釣った方が効率がいいと思ったのだろう。
そのセッティングに時間がかかっているようで
ウソップが戻ってこないうちにこちらの竿の方に
アタリが来てしまった、というわけだ。
「ねぇ!!ちょっと!ウソップってばー!!」
泣きそうになりながら大声をあげれば
バタバタと慌てた足音が近づいてくる。
「悪ィ悪ィ!もう来たか!すげェなミドリ!」
「も…無理ぃっ……!!」
後ろから聞こえる呑気な声に怒りを覚えながらも
限界を超えた腕は釣竿に引っ張られ
甲板の柵から上半身が飛び出す。
と、途端に竿が軽くなった。
「オラッ!!」
ウソップの手が回されたせいだった。
その腕は私を抱えるように
後ろから両腕を回して竿を握り
片足は柵にかけて踏ん張っている。
私の腕の両側に、ひとまわり太い腕が並ぶ。
ウソップ独特のクセ毛が頬に触れ
思ったよりも近くに横顔があることに気付き
私は思わず竿から手を離した。
「あッ?オ、オイ!なに手ェ離してんだよ!!」
「えっ?あ、ごめんっ!」
慌てて竿を掴み直すと
ウソップと共に最後の力を振り絞った。
「うおォォォー!!!」
うるさいほどの気合いの声と共に竿が引かれ
フッと抵抗がなくなったと同時に
視界が回り、甲板の床に2人して尻餅をつく。
糸の先では私と同じくらいの大きさはある魚が
ビチビチと甲板で跳ねていた。
「やったなミドリ!大物だ!!」
向けられた手のひらに
呆気に取られたまま自分のそれを合わせた。
ウソップは満足気にニッと笑うと
立ち上がり、釣れた魚の方へと向かった。
騒ぎを聞きつけた何人かの仲間たちも
その周りに集まってくる。
「なんだよウソップ!釣りするなら呼べよな!」
「呼んだよ!お前どこ行ってた、ルフィ!いいから生簀開け!」
「なかなかの大きさですねー!」
「だろ?ミドリが初めて釣ったんだ。」
「ミドリちゃんが!?じゃあ、たっぷり愛情込めて調理しないとな!」
「ウソップ!治療器具の整理終わったから、おれも釣りするぞー!」
仲間たちに囲まれ嬉しそうにしているウソップを
その場から動くことができないまま見ていた。
後ろから回された手。
抱き締められていると錯覚しそうだった。
そして、私とは比べ物にならないその腕力。
ウソップのくせに……
あいつにこんなドキドキするなんて
私は本当、どうしちゃったんだろうか……
「大丈夫か?ミドリちゃん。」
「あ、うん!ありがとう。腕が少し疲れちゃって。」
いつまでも座り込んでいる私を心配して
差し出してくれたサンジの手を取り立ち上がる。
釣り糸の処理をしながらウソップもこちらへ来て
申し訳なさそうな顔をした。
「悪かったなァミドリ。どっか痛ェか?」
「大丈夫!ほんと!全然何とも!」
「てめェウソップ!二度とミドリちゃんに無理さすんじゃねェぞ!」
「痛ェ!サンジ君!痛いです!!」
サンジがウソップのお尻に何度も軽く蹴りを入れ
痛がるウソップ。
それを見て笑う仲間たちと、私。
笑顔を向けながらも
ドキドキと高鳴ってどうしようもない胸に
動揺していた。
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