はじめてのオトコ/ロー
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「ひとつ、教えてやる。」
ミドリが無言で睨み続けていると
ローの方が口を開いた。
「万が一ここでお前に”男”ができたとして、数週間後、島を出る頃には別れることになるんだぞ。」
「……そっか。」
「おれがそいつを船に乗せるわけねェだろ。」
「……確かにそうですね、はい。」
ローははァ、と息を吐いた。
そんなことにも気付いていなかったようなヤツに
無理やりのキスだけで
自分の気持ちに気付かせようとしていたなんて
やはり無謀だった。
ローは席を立ち、テーブルを回り込んで
ミドリの横の床へ座り込むと片膝を立て
下から顔を見上げる。
「それを踏まえれば、同じ船のヤツにしとくのが一番手っ取り早いって気付け。」
「………」
目の前にいるだろ。
そんなローの気持ちは届かず
ミドリはレストランから飲んでいるお酒のせいで
あまり回らない頭を一生懸命フル回転させていた。
「え、仲間の誰かってことですか?」
クルーの顔をひとりひとり思い浮かべるが
誰ひとりピンとこない。
だって彼らはいつもキャプテンに夢中で
恋愛になんて目が向いていなさそうだから。
それに私が恋をしているのは……
下から真っ直ぐに投げられる視線と目が合う。
まさか、キャプテン?
いやいやいや。
キャプテンは……無理でしょ。
そんな都合良くいくわけがない。
勘違いしそうになったところで
冷静になって視線を逸らす。
と、膝に置いていた手を
伸ばされた大きな手に掴まれた。
「いるだろ。ひとり。」
身体が跳ねた。
昨日のキス。
熱い視線。
握られた手。
どうやら見当違いでもないみたいだ。
「………」
ミドリの顔が耳までみるみる赤くなり
ローは握った手を自分の方に引いた。
「おれとか……あいてるぞ。」
殺し文句だった。
ボンっと音が聞こえるほどに
ミドリの全身が真っ赤に茹で上がる。
私は別に、あなたに熱をあげてはないですよ
なんて態度は、もう二度とできない。
それでも、確信的な言葉を言われないと
にわかに信じられないミドリは
椅子から降り、ローと向かい合うように正座した。
「キャプテン、私のこと好きなんですか?」
「っ……」
あまりにも真っ直ぐな問いかけに
今度はローの方が視線を逸らす。
「だったらどうだってんだ。」
「……物好きなヤツ、ですね。」
「そうだ。悪ィか。」
フッと笑ってミドリの頭の後ろへ手を回すと
自分の方へと引き寄せた。
「できたじゃねェか。”オトコ”。」
2人の唇が静かに重なった。
…fin