はじめてのオトコ/ロー
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「………」
残されたミドリは
何やらすごく怒っている船長を前に黙り込む。
「こんなとこまで、のこのこついて行きやがって。」
手に持った鬼哭をコツンと頭に当てられた。
「いたッ!一緒にお酒飲もうとしただけです。」
「酒飲むだけで済んだと思ってんのか。」
「いい人でしたよ?もしヤバいヤツでも、あんな男になんか負けません。何でキャプテンここにいたのか知らないけど、余計なことしないでください。ここにいる間は自由行動でしょ?」
「………」
言った後で、ハッとした。
また酷い言い方をしてしまった。
もしかしたらキャプテンは自分を危ないヤツから
助け出そうと来てくれたのかもしれないのに。
「……あの、」
「来い。」
言い過ぎたことを謝ろうとしたが
突然大きな手に右手を繋がれる。
ローはそのままホテル入口の扉へ手をかけた。
「えっ、何でそうなるの?行きませんよ、ホテルなんて。」
「あんなどこの誰かもわからねェ野郎とは入れて、おれとは入れねェとでも言うのか。」
「だ、だってそれは、お酒飲めるって言うからっ…」
「なら、おれが飲ましてやる。」
抵抗するミドリの手を引いたまま中に入ると
ロビーには誰もおらず
宿泊する部屋を選んで代金を払えば
カードキーが出てくるという
なんとも機械的な受付があるだけだった。
「バーも飲み屋もねェし、どこで酒が飲めるってんだ。」
それ以上口にはしなくとも
ミドリを見下ろしてくる呆れ顔から
どう見ても騙されてたんじゃねェか、このあほ
と言う言葉が伝わった。
「……もしかしたら部屋にお酒が…」
「黙れ。」
ローは適当な部屋番号を押して金を入れる。
「えっ、入るんですか!?」
慌てるミドリを無視して
出てきたカードキーを手に部屋へ向かった。
その間のエレベーターや廊下でも
2人の手はしっかりと繋がれたままで
骨ばった大きな手の感触に
ミドリの身体は熱を帯びてくる。
「ほら!あるじゃん!キャプテン!ほらほら!!」
入った部屋の冷蔵庫を開け
何本か酒が入っているのを見つけると
ミドリはそれを次々とテーブルの上に出す。
まァせっかくだから飲むか、と
ローは瓶を開け、2つのグラスに酒を注いだ。
テーブルに向かい合い
2人揃ってそれを口に含んだ。
ローの後ろにある大きなベッドが
嫌でもミドリの視界に入ってきて
視線を逸らすとどうしても挙動不審になる。
そもそもこんな密室で男と2人きりのこの状況。
しかも相手はこっそりと想いを寄せる人。
それだけでもいっぱいいっぱいなのに
ここは大人な男女があれこれする場でもあって…
何をどうしたらいいのかわからなくて
とりあえず勢いのままに酒を飲んだ。
ローはそのミドリの心情を
見透かしているかのようにフッと笑みを浮かべる。
「この島で男を作るそうだな。」
「なっ……イッカクのおしゃべり!」
ムッと頬を膨らませて呟くミドリ。
「できそうなのか?男は。」
この状況でそれを聞いてくるなんて
本当に意地悪だな、とローを睨む。
「もうちょっとだったところを、キャプテンに邪魔されました。」
「会ってすぐホテルに連れ込むような男はやめておけ。」
ムッとするローに対して
今まさに私をホテルに連れ込んでいる自分は
どうなんだ、と心の中で呟く。
「そもそもキャプテンには関係ないし。私にもし”男”ができたら、どうだって言うんです?」
「物好きなヤツがいるもんだ、と思うだけだ。」
「………」
もう一度、目の前の相手を睨みつける。
ローはその視線を気にもせず
空になったグラスに酒を注いだ。
そもそもこの男は
どんな気持ちで昨日あんなことをして
自分をこんな場所へ連れ込んだのだろう。
どちらもただの仲間にする行動ではない。
それとも、誰にでもこういうことが
できてしまう人なのか…
モテる人ってそうなの?