はじめてのオトコ/ロー
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いい感じにオシャレな店で
一目見て気に入ったワンピースとパンプス。
試着室でそれに着替えると、いつもとは全く違う
自分の姿に、自分で見入ってしまった。
なんというか、とても女性らしい。
代金を払い、そのまま店を出た。
手に持つ紙袋には、いつも着ているつなぎと
履いていたブーツを押し込んである。
これで自分を海賊だと思う男はいないだろう。
心なしか、いつもよりも背筋も伸び
凛とした姿勢で街中を歩いた。
さて、ここからどのようにして”男”を作ろうか。
とりあえず、先ほど通り過ぎた
カップルばかりの公園へ行ってみることにした。
そこにいれば、誰か声をかけてくるだろう。
なんて言ったって、今日の自分は
今までにないくらいに女らしいのだから。
ミドリは自信満々にその公園へ行き
目立つ噴水の前のベンチに腰をかけた。
しかし小一時間そうしていても
彼女に声をかける者は誰ひとりとして現れない。
気付けば辺りは夕暮れ時。
周りにいるカップル達は密着度が増し
2人の世界で盛り上がっている中
ぽつんと一人でいるのは拷問のように感じられた。
「……帰ろっかな。」
今日は失敗だったみたいだ。
「ねぇキミ、ひとり?」
諦めて帰ろうと立ち上がったところで
声をかけられた。
来た!
ミドリはピッと背筋を伸ばす。
「ひとりです!」
笑顔を向ければ、男性の方も人懐こそうに笑い
優しい表情でミドリを見つめていた。
「……あのバカが。」
どこかへ向かって仲睦まじく歩き出す2人を
噴水の陰から見ていたローは
見つからないよう距離をとって2人の後を追う。
なぜおれがこんなストーカーのような真似を…
でもこのままでは、あの女は必ずヘマをする。
くそ、あんなヒラヒラした服着やがって。
大体何なんだ、男を作るって。
あのキスから、なぜそういう思考回路になる。
少し痛い目に合うのもあいつのためかと思い
何度か帰ってしまおうとも思ったが
結局放っておけずにこうして見張っている。
2人がレストランに入っている間に
すっかり日が暮れた。
ローは向かいの飲み屋で酒を頼み
店の外の席でひとりそれを飲んでいた。
と、食事を終えた2人が出てきたので
また静かに後を追う。
辿り着いた先は、ローが頭を抱える場所だった。
「え?二軒目ってここ?」
男に連れられるままにミドリがやってきたのは
大通りから一本裏にあり、ネオンが輝くホテル街。
そのうちのひとつであるホテルの入り口前で
さすがのミドリも足を止めた。
「ごめん、ホテルじゃ不安になるよね。でもさ、酒も飲めるんだよ、ここ。」
「あ、あぁ!そうなんだ!ごめんなさい、変に勘違いしちゃって。」
「じゃ、行こうか。」
男がミドリの肩を抱き
入ろうとしたところで、背後から低い声が響いた。
「おい。」
突然現れたローの姿にミドリは驚いた。
「え、キャプテン?どうして…」
「お前は黙ってろ。」
ミドリにそう言うと、そのまま視線をずらして
男の方を睨みつける。
「その女はおれの連れなんだが。」
たった一言に込められた計り知れない怒りと
全身から感じられる威圧感に
男は尻込み、ミドリの肩からすぐに手を離した。
「あ、そ、そうだったんですか!すみません、知らなくて。では失礼します。」
関わってはいけない相手だと感じ取り
逃げるように男はその場を去って行った。