はじめてのオトコ/ロー
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〜はじめてのオトコ〜
たまには夜空の月を見ながら宴をしたい!
船長へそう懇願したクルーたちのために
ハートの海賊団を乗せたポーラータング号は
海上へと浮上していた。
この夜は波も穏やかで、空気も澄み
月だけでなく多くの星も鮮明に見ることができた。
「キャプテ〜ン!こっちでも飲みましょうよ!」
「そうッスよ!ずっとそこじゃないですか!」
宴会が始まってから変わらず
ベポのぽってりとした腹に寄りかかるように座り
そこから一歩も動かないローへ向かって
離れて飲んでいたクルーたちが文句を言い始めた。
このように、宴のたびに
仲間たちによるローの取り合いは起こる。
彼らの船長へ対する愛は異常なほどだ、と
ミドリは常日頃から思っていた。
船長が何かをするたびに
キャーキャーと黄色い声援をあげる光景は
他の海賊団では見ることはない。
確かに、我らがキャプテンは魅力的な人。
その容姿が完璧なだけでなく
いつも冷静沈着で、仲間思いで統率力もあり
何より強い。
憧れという気持ちが度を超えてしまって
そういう反応になってしまう仲間たちの気持ちも
よくわかる。
でも、私は違う。
皆に混ざることなく、端の方で傍観しているだけ。
私は別に、キャプテンに対して
そこまで熱を上げてはないですよ
っていう態度でいつも一歩引いている。
「どうした?ミドリ。」
「ん、ちょっと酔い覚まし。」
隣で飲んでいたイッカクにそう告げて
ミドリは皆から離れ、潜水艦の後方へ向かった。
皆でわいわいやるのも、もちろん好きだが
ひとりで静かに過ごしたい気分だった。
海の方を向いて柵に肘をかけ、体を預けると
酒によって火照った顔に心地いい海風があたる。
星が輝く夜空と真っ暗な海面の境界線は曖昧で
ひとつの夜の景色として目の前に広がっていた。
と、近付いてきた足音が隣で止まる。
「具合でも悪ィのか。」
聞きなれた低音の声に、ドキッと心臓が脈打った。
さっきまで皆の中心にいた、船長のローだった。
「いえ、ちょっと酔いを覚ましに。星も綺麗だし。」
「おれも少しここにいる。あいつらうるせェ。」
言いながらローは隣まで来ると
ミドリが肘をかけている柵へ背を預け
肘をかけた。
自分の腕とローの腕が柵の上で反対向きに並んで
今にも触れそうなその距離に身体が固まった。
いつも誰かに囲まれているキャプテンを
今は独り占めしている。
その事実にどうしても動揺してしまう。
私は別に、あなたに熱をあげてはないですよ
っていう態度でいたいのに
努力も虚しくドキドキと脈打つ鼓動は
抑えられないほどに速くなる。
きっと顔も真っ赤になってるに違いない。
そう。
仲間たちの中で、一番度を超えてしまっているのは
他の誰でもない、この私だ。
だから、皆と同じようになんて騒げない。
私のは本気すぎて、人前でキャプテンへの好意を
表に出すことなんてできない。
ドライな態度を貫いて
一歩引いて、見ているしかできない。
自分がキャプテンに対して抱いているのは
完全なる”恋心”だから。
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