最終章 〜私の居場所〜
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翌朝。
兵士たちによる出航準備が完了する頃
まとめた荷物を手にミドリは甲板へ出た。
「申し訳ありません。急に辞めることになってしまって……他の皆さんにもよろしく伝えてください。」
任務についてきていた数人の使用人仲間たちに
頭を下げる。
「故郷に帰れるなんて、良かったじゃない。」
「マリナもいなくなったばかりだし、また寂しくなるわ。」
「元気でね!」
「皆さんもお元気で!お世話になりました。」
「ねぇ、ヨンジ様は?」
「専属が退職するっていうのに、見送りにも来ないの?」
「ほんっと冷徹!」
ヨンジに対して口々に文句を言う侍女たちに
ミドリは笑顔を向けた。
「うん、もういいんです。」
——召使いのひとりやふたり減ったって、私は痛くも痒くもない
「見送りになんて、来るわけない……」
結局ヨンジとはあれっきり、顔も合わせなかった。
もしかしたらギリギリで
引き留めに来てくれるかも、なんて
淡い期待を抱いていたが、見事に砕かれた。
皆に見送られながら船を降りると、しばらくして
ジェルマの船は向きを変え、走り出す。
後甲板から手を振ってくれるかつての仲間たちに
見えなくなるまで大きく手を振り返した。
「さよなら…ヨンジ様……」
船が見えなくなった水平線に向かって呟くと
堪えていた涙が一気に溢れ出す。
「うっ…ううっ……」
その場に誰もいないのをいいことに
海の方を向いたまま思い切り泣いた。
「ヨンジ様……」
最初は大嫌いだったけど…
最後には大好きになってしまった人。
あんな気持ちになったのは生まれて初めてだった。
海に向かってその名前を呟くと
胸が張り裂けるほど痛くなる。
こんなにたくさんの未練を残して
この想いを断ち切ることなんて、きっとできない。
どんなに名前を呼んだって、もう会えない。
それでも、名前を呼ばずにはいられなかった。
あなたを想って泣くのは、これで最後にするから。
「っ…ヨンジ様っ……ヨンジ様……」
「なんだよ。」
誰もいないはずの埠頭。
背後から声が聞こえて、思わず振り返る。
「!!」
そこに立っていたのは確かに、ヨンジ本人。
「えっ……どうして……」
夢?幻?
涙でぐちゃぐちゃの顔を手のひらで乱暴に
ごしごしと擦り、改めてよくよく見直す。
が、やはりそれはヨンジだった。
腕を組み、仁王立ちでこちらを見据えている。
「何してるんですか!?船出ちゃいましたよ!」
「わかってる。おれの指示だ。」
「早く追いかけないと!置いていかれちゃいますよ!?」
「心配するな。おれが呼べば迎えがすぐに来る。」
「でもっ……」
戸惑うミドリをよそに
ヨンジは至って冷静にそばへ寄る。
「やはり、おれのそばにいろ。」