最終章 〜私の居場所〜
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「ミドリ、君の出身はエストピアという国だったね。」
ヨンジの背中を見送ると
横にいる執事に不意に声をかけられ、我に返る。
「あ、はい、そうです。けど、もうあの戦争で……」
「それがな、明日からヨンジ様が任務に向われるのがその島なんだ。」
「……え!?」
執事の話によれば、4年前ジェルマの介入により
ミドリの出身地であるエストピアと
隣国との戦争は終息した。
エストピアはその後、隣国の領土となったものの
この4年間で復興を遂げていた。
今回のヨンジの任務はその国との
武器や装備の取引を目的としたものだった。
「今回は戦争ではない安全な任務だし、故郷を訪れるいい機会だ。ヨンジ様に同行させていただくといい。それとも君にとっては辛い場所か?」
「そうですけど……でも、町がどうなっているのか知りたいです。」
「なら、そうさせてもらいなさい。」
ーーーーーーーーーー
「——というわけなので、明日、私も連れていってくれませんか?」
部屋へ戻ってきたヨンジに、ミドリは頭を下げた。
「別に構わない。」
力が入り、意気込んでいるミドリを前に
ヨンジの方はあっけらかんとしていた。
「お前の故郷か。あの小さな国が。あァもう国じゃないんだったな。」
「形は何でもいいんです。あの戦争から、町はどうなったのか、誰か生き残ってくれているのか…それを確かめたいんです。」
「好きにしろ。」
「ありがとうございます。」
「………」
その日の夜、部屋で荷造りをしながら
ミドリの胸は熱くなる。
生まれ育った場所へ行ける。
何年も続いた、本当に酷い戦争だった。
思い出したくもないほど、辛い記憶。
それでも行きたい。
もしかしたら
誰か生き残った友達に会えるかもしれないし
お父さんとお母さんも眠っている場所だから。