最終章 〜私の居場所〜
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最終章 〜私の居場所〜
「はぁ…はぁ……」
城の中を急いだ。
この時間ならきっと訓練中だろう、と
トレーニング室へと向かう。
ちょうど訓練を終え、目の前の扉から出てきた
ヨンジの姿がミドリの目に留まる。
——おれの大事な女を傷つけやがって
思い出してミドリは顔が熱くなった。
とても嬉しかった。
私はやっぱりこの人のことが……
思い切り抱き付いてしまいたかったけど
緊張から、身体が固まっていた。
それに、素直になることがまだ少し怖い。
顔の汗を、肩にかけたタオルで拭きながら
こちらへ歩いてくるヨンジもミドリに気がつく。
「あの女は行ったのか。」
ミドリとは反対に、ヨンジはいつも通りだった。
「あ、はい。お別れを言いに行かせてくれて、ありがとうございました。」
「理解できないな。あんな女にわざわざ見送りなんて。」
言いながらヨンジは横を通り過ぎるが
立ち止まったまま後ろをついてこないミドリに
一度足を止めた。
「どうした。」
と、ミドリはヨンジに向かって深く頭を下げる。
「……あの、ごめんなさい!」
「あ?」
「嫌がらせのこと…ヨンジ様を疑ったりして。」
「そんなことか。今さらもう、どうだっていい。」
「でも……」
「だがな、前に言ったことは忘れるな。おれはもう、お前が嫌がることはしない。」
「………」
その言葉に、熱くなった顔を上げられない。
正面からヨンジの足音が近付く。
目の前で立ち止まると
顎に指を添えられ上を向かされた。
ミドリを見下ろすヨンジと視線が交差する。
「赤いぞ。顔。」
顎に添えられた指先は撫でるように頬へ移動した。
こんなふうに
正面から見つめたのは久しぶりだった。
——好きになっちゃいけない人なんて、この世にいないよ
マリナの言葉が頭の中に響いた。
目の前のこの人のことを…好きでいてもいいの?
「……今日は逃げないのか。」
2人の顔が少しずつ近づく。
このまま目を…閉じてしまいたい……
そしたら……
「!!」
廊下の奥から足音が聞こえ
ミドリは慌ててヨンジから離れた。
「ヨンジ様。」
現れたのはジャッジの執事だ。
「明日の任務のことで、ジャッジ様がお呼びです。」
「わかった。すぐに行く。」
離れていくヨンジの背中を見送った。
胸はドキドキと鳴り止まない。
頬に残るヨンジの温もりも久しぶりの感覚だった。
キス、してほしかった。
面と向かって見つめ合ってしまうと
自分の気持ちからも目を逸せなくなった。
私はやっぱり
ヨンジ様が好き。