第七章 〜大事な人〜
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カチャカチャと鳴る陶器の高い音が耳に響き
目が覚めた。
まだ、頭が重い。
さっきから何なんだ。
次から次へと人の眠りを妨げやがって。
「うるせェな……」
目を開けると、そこにいたのは
ミドリではない、侍女の姿。
「申し訳ありませんっ、起こしてしまいました?」
マリナだった。
「あ?何だてめェ。」
「ミドリがいないようなので。代わりにハーブティーをお持ちしました。」
目の前のローテーブルには
ポットとティーカップが置かれていた。
「別に頼んでねェが。」
「具合があまりよろしくないようですので。余計なお世話だったらすみません。」
マリナがカップにハーブティーを注ぐと
甘く優しい香りが広がった。
それに引き寄せられるようにヨンジは体を起こす。
一口すすると、確かに少し気分がスッキリした。
と、マリナがヨンジに寄り添うよう
隣に座ってきた。
馴れ馴れしい行動に、イラッとする。
「なんだてめェは。もう下がれ。」
「ヨンジ様は、勘違いされてるだけです。」
「あ?」
唐突に話し始めるマリナに苛立ち始めるが
マリナは構わず続けた。
「初めて女性をそばに置いて、距離が縮まって、それを恋だと。それが偶然あの子、ミドリだっただけです。」
ミドリの名前が出て、ヨンジの顔色が変わる。
「あんな平凡な子はどこにでもいる。私の方が、ヨンジ様を幸せにできます。」
マリナが撫でるように腕をからめてきて
そのまま膝の上で手を重ねてきた。
ゾッとした。
ミドリと同じ、小さく柔らかな女。
でも、違う。
ミドリに触れたいと思う気持ちとは
全く、何もかもが違う。
ヨンジはマリナの腕を引き剥がし
距離を空けて座り直した。
「お前は違う。」
「そんなことない!ヨンジ様は、まだわかっていないだけです!」
「黙れ。お前のおかげでよくわかった。私はやはり、ミドリでないとダメだ。」
「っ……名前……」
「あ?」
「いえ……でも、あの子はうんざりしています。あなたの専属でいることに。ワガママ王子だ、やってられない、と、毎日そのような小言ばかり言っています。」
「知るか。仮にそうだったとしても、あいつが直接私に言えばいいことだ。お前には関係ない。」
「っ……」
マリナはそれ以上何も言えず、悔しそうな
表情を浮かべる。
そこから逃げ出そうと立ち上がるが
その腕をヨンジに掴まれ、止められた。
「あいつは誰かに嫌がらせされていたらしい。犯人は私だと勘違いしていたが……お前だな。」
「っ……ヨンジ様がいけないんです!ミドリのことばかり構うから!!」
「お前はもうここを辞めろ。」
「そんなっ!」
ヨンジはマリナから手を離し背を向けた。
マリナは慌ててその背中に向かって頭を下げる。
「申し訳ありませんでした!もう二度とこのようなっ」
「黙れ。許すわけないだろう。おれの———」