第七章 〜大事な人〜
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次の日の朝。
新調した仕事着で、ヨンジの部屋へと向かう。
何て言ってやろうか、と考えていた。
昨日の嫌がらせの犯人がヨンジだと
決まったわけではないが、それ以外考えられない。
自分がこの綺麗なワンピースを着ていることで
きっと何らかの反応を見せるはず。
それで彼が犯人かどうかわかるかもしれない。
見逃さないようにしなきゃ。
意を決して、ノックする。
——コンコンッ
「………」
反応がない。
「ヨンジ様、失礼いたします。」
何度かノックをしても返事がないので
ドアを開けると、異様な光景が広がっていた。
「ヨンジ様!?」
荒れた室内。
脱ぎ散らかされた服が床に散乱し
テーブルや椅子は倒れ
酒瓶がいくつも床に落ちていて、溢れた中身が
カーペットや床に落ちているシャツを汚していた。
その中心でヨンジが大の字で寝そべり
大口を開けて気持ち良さそうに眠っている。
ここまで乱れたヨンジを見るのは初めてだった。
「ヨンジ様!?ヨンジ様!!大丈夫ですか!?」
駆け寄って体を揺するが
寝息を立てているだけで反応はない。
「あァ?何を騒いでやがる。」
開け放たれたままのドアから
ミドリの声を聞いたニジが顔を出した。
「ぶぁっはっはっは!ケッサクだな!どんだけ飲んだんだ、こいつ!!」
「ニジ様。」
「相当嫌なことでもあったんだな。面白ェ。」
「あの…ベッドにお運びします。」
ミドリは人手を呼んでこようと立ち上がるが
ニジは「必要ねェよ」と、ヨンジに蹴りを入れた。
「オイ!朝だぜ、起きろ!この酔っ払い!!」
ヨンジの横腹に何度も入れられる容赦ない蹴りに
ミドリは慌ててニジを止めようとする。
「ちょっ、おやめください!ニジ様!」
「飲みすぎた後はこんくらいしねェと起きねェんだよ。」
「でもっ……」
ミドリの制御もむなしく、何度かニジの
蹴りが入ると、次第にヨンジが顔を歪める。
「ぐっ……なんだ……」
脇腹を抑えるように体をよじった。
「ヨンジ様!大丈夫ですか!?」
「うるせェ……」
慌てるミドリの高い声が響いたのか
今度は頭を抑え、顔を歪めながら起き上がると
据わった目で目の前の2人を交互に見た。
「……なんだ、お前ら揃って。仲良しか。」
ムスッと不機嫌そうに口を尖らす。
どうやらまだ酒が抜けきっていないようだった。
「ヨンジ様、朝食の時間ですが……」
「うお!そうだ、おれも腹減ってたんだ。先行くぞ。」
「ニジ様、ありがとうございました!」
2人を残して部屋を出るニジの背中に向かって
礼を言うと、ミドリはヨンジの方へ振り返り
心配する表情を向ける。
「具合はいかがです?お食事は後になさいますか?」
「おれを舐めてんのか。こんなの何ともない。」
ヨンジは立ち上がると身なりを整えた。
「お前はここを片付けておけ。」
「承知しました。」
廊下へ消えていくヨンジの背中を見送ると
荒れた部屋の中を見回し、ため息を吐いた。
仕方なく、床に散らかった物から手に取り始める。
と、足元を見て思う。
そういえば、私のワンピース。
自分がズタズタに切り裂いたはずの仕事着を
私が着ていること
ヨンジ様は気が付いていただろうか?